実は多い?男性の更年期障害。気分の落ち込みやイライラ、加齢のせいと思った症状は更年期が原因かも 仕事との両立、動き出した環境整備
2023年夏ごろのこと。関西地方に住む会社員の男性(39)は「日常生活もままならないほどの疲労感」に襲われた。起床するのがつらい。体が重い。会社に遅刻しそうになったり、気分が沈んで仕事に身が入らなかったりした。 【写真】手術の後、勃起障害に…産婦人科での冷たい視線「涙が止まりませんでした」 がんと診断されたら性生活はどうなるの?タブー視されてきた切実な悩み
以前から心療内科に通院しており、抑うつ傾向が強く出ているのかと思った。インターネットで症状を調べる中で男性の更年期障害を知った。「これかな」と思い当たり、病院を探して検査を受けた。すると、男性ホルモンの値が基準よりはるかに低く、やはり更年期障害の疑いを指摘された。 更年期障害は女性の健康課題だと思われがちだが、男性の間での認知度が低いだけで、症状が当てはまる人は実は多いとみられている。企業や自治体は仕事との両立に向けた環境整備に動き出した。(共同通信=越賀希英) ※筆者が音声でも解説しています。「共同通信Podcast」でお聴きください。 ▽職場で「平静を装うのがつらい」 更年期障害の治療開始から間もなく10カ月。男性は投稿サイトの「note(ノート)」に「ダーシマックス」のクリエーター名で自らの経験を発信している。治療は男性ホルモンを補充する注射を打つものだ。注射を打って2~3日たつと「朝の目覚めが全然違う」と効果を実感するという。 現在、2週間ごとに通院しているが、注射してから1週間をピークに効果が徐々に落ち始め、次の注射の前に疲労感が出てくる。そのため男性ホルモンを補充する塗り薬も補助的に使っている。
出勤できた場合でも「職場で平静を装うのがつらかった」と振り返るが、現在は男性ホルモンの値が上昇。「体力も体調も改善して良かった」と胸をなで下ろす。 自身の経験を伝えることで「同じような症状の人たちにとって情報源が増えたらいい。男性更年期への注目度が上がれば、治療方法も増えるのではないか」と考えている。 ▽疲れやすい、男性機能の低下…症状はさまざま 佐々木クリニック泌尿器科芝大門の佐々木裕院長によると、男性更年期は男性ホルモンのテストステロンが低下することで起きる。症状はいらいらや気分の落ち込みのほか、疲れやすい、男性機能の低下などさまざまだという。40歳以降から男性ホルモンが減少し、どの年代でも起こり得る。 受診の窓口は泌尿器科やメンズヘルス外来で、男性更年期に当てはまるかどうかを調べる「AMSスコア」という質問票で判定する。採血でホルモンの値を測定する方法もある。治療法はホルモンを補充する注射や、漢方薬の使用などがある。食生活にも密接に関係しており、生活習慣を整えたり、軽い有酸素運動を無理のない範囲で取り入れたりするのも有効だという。