齋藤健 経産大臣が語る「世代交代」「新しい時代のリーダー」と「中堅企業」
「30年ぶりの潮目の変化」という歴史的転換点
──賃上げ促進税制など、賃上げと国内投資を後押しする政策が目立ちます。 齋藤:大阪の業務用冷蔵冷凍庫メーカー(フクシマガリレイ)を視察したときに、本当に驚いたことがありました。やるべきことを全てやっているなと思ったんです。 まず、事業承継で困っている会社をM&Aで引き受けて、結果的に事業の多角化に成功している。メーカーとして製造するだけの業務から、買収をしていったことで、食品事業やメンテナンスビジネス、食品工場省力化など関連分野を広げていき、海外に製造販売拠点もつくり、しっかりと海外進出をやっている。 一方で地元での雇用を大事にしている。なんと、10%以上の賃上げをしているんです。それから設備投資も。もう一つ、感心したのが、地域への貢献。自分たちの施設を開放して、新たな商品開発をするための設備の利用を無料で地域に提供し、貢献している。 まとめると、M&A、多角化、海外進出、国内投資、雇用、賃金、地域貢献。これが中堅企業のありようだなと思いました。そして、お父さんとご子息の事業承継もちゃんとやっている。およそやらなくちゃいけないことをぜんぶやっている。そういう意味でいうと、こういう中堅企業が他にもたくさんあり、ここをターゲットに応援していけば、もっと地域に貢献できると強く感じました。 ──齋藤大臣は、『転落の歴史に何を見るか』という名著があり、歴史家でもある。歴史の観点から見て、今をどう読み解くか? 齋藤:いま日本経済に30年ぶりに潮目の変化が見えるようになってきました。たとえば、2年連続で賃上げができて、国内設備投資が伸びてきた。今まで80兆、90兆のレベルだったのが、30年ぶりに100兆円を超えました。おそらくDXやGXだということで新しい投資をしなくてはいけない、そういう時代になったので、投資も増えてきているのだと思う。 今までデフレマインドでコストカット中心に経営をなんとか持続させてきたと思います。しかし、これから投資だという機運になってきました。そして経済活性化して、賃金を上げるという流れになってきました。30年ぶりの潮目の変化ができていて、物価も少し上昇する、賃金も上がる、そして投資も増えるという好循環に転換できるかどうか。30年ぶりの潮目の変化が日本経済に訪れているということなんですね。 ──著書の中で、敗戦までの歴史を振り返ると、自己変革できなかったことが転落の始まりだと指摘している。 齋藤:明治維新から昭和までを振り返ると、歴史には大きなうねりがある。その一つは言うまでもなく、戦争です。もう一つの要素としてあるのは世代交代です(編集部注:齋藤氏は著書のなかで、武士の末裔と明治維新後の近代軍事教育を受けた世代のベストコンビネーションが日露戦争までと指摘している)。 30年というのは大きな世代交代の節目の長さでもあると思います。いま起こっていることというのは、新しい時代のリーダーたる後継者が中堅企業の中に続々と生まれている、そういう時代でもあるのかなと思っています。この動き、そして、日本の若者には私は期待しています。
Forbes JAPAN 編集部