令和の京都はビールが美味い!クラフトビールと京都のペアリングを楽しむ『琥珀の夢で酔いましょう』 #京都が舞台の物語【書評】
『琥珀の夢で酔いましょう』(村野真朱:原作、依田温:作画、杉村啓:監修/マッグガーデン)は京都を舞台にクラフトビールの魅力を描いた作品だ。
この作品を読み始めた当初の私は、クラフトビールについて馴染みがなく「お洒落でハードルが高そう」という先入観を抱いていた。しかし本作を読むうちに、専門店や輸入食品店だけではなくコンビニでも気軽に手に取ることのできる「水曜日のネコ」「インドの青鬼」といったクラフトビールもあることを知り、クラフトビールへの親しみを得ることができた。そこから一歩踏み込んで、今やいちクラフトビールファンである。 派遣社員の広告デザイナー・剣崎七菜(けんざき・なな)は、実力がありながらも派遣という立場ゆえに周囲から自分の仕事を認めてもらえずヤキモキする日々を送っていた。そんなある日、たまたま立ち寄った居酒屋・白熊で初めてクラフトビールに出会い、苦手意識を持っていた従来のビールとは違うその風味に感動を覚える。 七菜は白熊の店長・隆一(りゅういち)に頼まれ同じく客だった写真家・鉄雄(てつお)と共に客足の悪い白熊のアドバイザーとして活動することになる。白熊を京都の総菜を指す「おばんざい」に合うクラフトビールを提供する専門店にする案を出したことで、七菜はクラフトビールの魅力や知識を学ぶことになり、その過程で様々な人との交流を深めていく。 本作の魅力は何と言ってもクラフトビールと料理のペアリング描写にある。 ワインの魅力をより引き出す料理があるように、個性豊かなクラフトビールそれぞれの風味に合う料理もある。その組み合わせを味わうことをペアリングと呼び、作中では料理に合わせたペアリングをはじめスイーツやパンとのペアリングも紹介している。 パンとのペアリングについて「ビールって液状のパンじゃないですか? 合わないわけないんですよ」と七菜が力説する回に登場した「よなよなエール」とレーズンパンのペアリングを試してみたところ、ビールの柑橘系の香りとレーズンの酸味が合わさり相性抜群! 筆者は普段パンやスイーツにはコーヒー、お茶を合わせるが、ペアリングを知ることで食の楽しみ方の幅が広がりワクワクさせられる。 ちなみにこのパンのペアリング、作中では天気の良い日に七菜と推しの女優・MAKOTOが二人で出掛けた京都御所で、という何とも羨ましいシチュエーションで行われている。 ほかにも七菜たちは鴨川、知恩院、大文字焼きといった京都の光景や地名が飛び交う中でクラフトビールを楽しんでおり、その様子はまさに「京都とクラフトビールのペアリング」と言える。そんな粋なペアリング、読んで楽しんでみてはいかがだろうか。 今後京都を訪れる予定があるビール好きな方は、本作を読んで予習し、「京都麦酒 ケルシュ」「茶かぶき」といった現地でしか手に入らないビールを手に入れ是非その舌で味わってもらいたい。 文=ネゴト / 花