新・防災グッズ「生活のソナエ袋」 知識の備えも大事な防災
もしも地震や土砂災害など大きな災害に遭遇して「被災者」になってしまったら、どうやって支援を受ける手続きをすればよいのか──。多くの人がよく知らないけれども、被災後の生活再建に必要不可欠な「り災証明書」や「被災者生活再建支援金」、「被災ローン減免制度」などの知識。これらをプリントした封筒型の防災グッズ「生活のソナエ袋」が登場した。 「半壊の壁」「境界線の明暗」の解決を 被災者生活再建支援法20年 グッズを作ったのは、東京・銀座で老舗文具店「銀座嶋屋本店」を営む「嶋屋」(東京都中央区、水野泰輔社長)。 防災グッズというと、非常食、携帯トイレ、救助用品、転倒防止器具、懐中電灯などがすぐに頭に浮かぶが、「法律や制度に関する知識を事前に身につけておくこと」自体を「防災」に位置付けてグッズ化するのは珍しい。 既に北海道胆振(いぶり)東部地震で被災した安平町の一部に試験的に配布し、「り災証明書の手続きに役立った」などと好評を得ているという。 生活再建に必要な知識を得ることができて、たくさんの書類をひとまとめに管理できる新グッズについて、水野社長は「災害が発生する前から、個人、企業、自治会、マンションの管理組合など、さまざまな場面で学びのツールとして活用していただき、いざというときに備えてほしい」と話す。
生活再建に必要な知識をわかりやすく説明
封筒型の生活のソナエ袋は、ふたを閉めた状態で縦15センチ、横23.5センチ。A4用紙を三つ折りしたものが30枚ほど収納できる。素材はクリアファイルなどと同じポリプロピレン・シートで、水にも強い。 目立つオレンジ色のケースの両面に、被災者の生活再建の第一歩となる「り災証明書」、「被災者生活再建支援金」「災害弔慰金」など「生活再建を支えるお金の制度」に関するわかりやすい説明がプリントしてある。 グッズのアイデアを出したのは、嶋屋と同じく銀座にある法律事務所に所属する岡本正弁護士だ。嶋屋が「り災証明書の申請書などを災害が起きる前に準備して入れておけるクリアファイルのようなものを作ろうと考えている」と岡本弁護士に相談したところ、「せっかくなら生活再建に必要な知識を盛り込んだものにしたほうが役に立つ」と提案されたのがきっかけだった。 岡本弁護士は、東日本大震災の被災地で行われた無料法律相談に寄せられた4万件以上の声を取りまとめた経験から、「家も職場も失い、どのような生活をしたらいいのか」という悩みを被災者の多くが抱えていることを身をもって知っていた。その中には、本来であれば支援を受けられるはずなのに、生活再建のための手続きや法制度に関する知識がないために途方に暮れてしまい、すぐに再建の一歩を踏み出せないケースも少なくなかった。被災者のために、生活再建のさまざまな制度をチラシで案内したり、法律家による無料相談会も開かれたりするが、「災害後にできることにはどうしても限界がある」と感じていたことが、今回の提案につながった。 岡本弁護士は、プリントする内容も監修。東日本大震災や熊本地震の時に実施した被災者を対象とした法律相談の内容を分析した結果などから「最低限これだけ知っていれば生活再建のスタートラインに立つことができる、という内容を厳選して盛り込んだ」と話す。