3億更改の筒香と届かなかった中田。2000万円の年俸格差はなぜ生まれたか
つまり積み重ねは中田が断然上だが、一気に筒香に抜かれてしまったわけである。これまでの球界の常識では考えられなかった快挙とも言えるが、実はこの2000万円の差には選手の立場ではコントロールできない理由があった。その理由のヒントは、中田が筒香の3億突破について聞かれ「凄いなあという印象。DeNAさんが頑張っているんですね」と呟いたひとことにある。 両チームの経営基盤に生まれている大きな差だ。 元千葉ロッテの評論家、里崎智也氏も、「この差には両球団の経営力もかかわっているのかもしれません。年俸には球団の資本力の差が影響します。例えは悪いかもしれませんが、同じコンビニのバイトで仕事内容も勤務時間も同じなのに店舗によって時給が違いますよね。それが資本主義です。その中で提示された金額に納得しサインした時点で、それが適正金額なんです。 だから私は筒香の3億も、中田の2億8000万円も適正だと思います。ただ筒香の3億が“やればもらえる”という今までのDeNAにはなかったモチベーションというか、空気感をチームに与えたことは大きいでしょうね」と指摘する。 横浜DeNAは池田純前社長の画期的なマーケティング戦略で観客動員を右肩上がりに伸ばし、今年に入り横浜スタジアムの経営権を手に入れ、球団、球場の一体経営を実現して、ついに黒字化に成功した。 「お客さんを増やし、チームの収入を増やして、それをチームに還元する。プロ野球は夢のある世界。筒香の期待に応えられる提示ができるくらいの余力が球団経営に出来てきた。凄い額を出せている球団(ソフトバンクや巨人)ほどではないが、もう出ていきたいと選手が考える球団ではなくなった」と、前社長は語っていたが、球団トップが交代しても、その方針には変わりがなかったのだろう。 独自にスタートさせたクラフトビールを場内で売るというビール事業だけで2億円以上の経常利益を出した。つまり筒香のアップ分は、ビールの売り上げで賄える。山口俊にはFAで出て行かれたが、筒香に大判振る舞いとも言える3億円を提示できた裏には、DeNAが買収してから好転した経営基盤があったのである。 選手会が発表した年報総額では約20億円の横浜DeNAは12球団最下位だったが、球団の体力は、最下位のそれではなくなっているわけである。 一方、日ハムには選手の年俸総額を約25億円をメドに抑えるという経営方針がある。 札幌ドームから本拠地を移す計画を進めているが、横浜DeNAとは違い球団と球場の一体経営ができていないため、高額な球場使用料にも圧迫され球場内での物販を含めた事業を推し進めることができず、たとえ大谷人気や、優勝、日本一という盛り上がりを見せても、それがイコール球団の経営基盤の好転に変わらないという現実がある。球団サイドもマネーボール的な経営理念を持ち、高額選手は放出、若手選手の育成に投資するという経営スタイルをとらざるをえない。この2000万円の差と、2人のセ、パを代表する4番打者の間に起きた逆転劇は、2人のプレーヤーとしての差ではなく球団経営の差だったとも言えるだろう。