プリキュア変身バンクのセリフを毎回収録する理由とは? いつもと違う「いっしょに遊ぼ♪」、わんぷり第45話で描かれた「相互理解」
毎回収録している「変身シーン」の声
プリキュアの変身シーンのセリフは毎回収録しているといいます。 これは「プリキュアが変身に至るまでの感情は毎回違うから」という理由からだそうです(このことはキュアハッピー役の福圓美里さんのインタビューなど、さまざまな媒体で言及されているので、古いプリキュアファンには周知のことかもしれませんね)。 この第45話で「戦うため」でも「守るため」でもなく、ただ「いっしょに遊ぶため」に変身したシーンの4人のプリキュアのセリフは、これまで変身の声とは明らかにニュアンスが異なっていました。 キュアワンダフル「いっしょに遊ぼ♪」 キュアフレンディ「あなたの声をきかせて」 キュアニャミー「仕方ない、構ってあげる」 キュアリリアン「こわくない、こわくない」 それはトラメ個人に向けた、やさしく温かい言葉。 一緒に遊ぶことにより、敵をもニコニコ笑顔にして友達になりたい。そんな感情のこもった4人の変身。まさに「わんだふるぷりきゅあ!」を象徴するかのような慈愛に満ちたそのセリフ。 同じ言葉でも、言い方ひとつで子ども達に違う感情を伝える。 プリキュア声優さん、ひいてはプロの声優さんの「表現の力」は本当にすごいのだな、とあらためて実感したのです。 キュアニャミー役の声優・松田颯水さんも「いつもよりさらにあたたかい温度が伝わるように発声していました」とXでつぶやいています。 ・お友達になれたばかりなのにと思わずにはいられないけど。登場人物みんなピュアで、こんなにあたたかい作品だからこそエターナルキズナシャワーが決め技なんやなぁ。変身バンクも決め技バンクも、いつもよりさらにあたたかい温度が伝わるように発声していました。(松田颯水さん)
子どもたちを信頼し、表現から逃げない
ペットを飼うことは、楽しいことだけではなく「死による別れ」を避けて通ることは出来ません。 プリキュアは子ども向けアニメーションなのだから「ペットを飼うことの楽しさ」だけを伝えることもできるはずなのに、「ペットの死」を真正面から描いたことは、どうぶつを扱う子ども向け作品においてとても真摯な姿勢だと思います。 「わんだふるぷりきゅあ!」は子どもたちを信頼し、表現から逃げません。 「恋愛表現」からも逃げることなく真正面から描き、悟君といろはちゃんは恋人同士となりました。「彼氏として何か出来ることはないか」「付き合って初めてのクリスマス」など、これまでのプリキュアシリーズではなかった恋愛のセリフも描かれます。 そしてペットを飼うことについても「陽」の部分だけではなく「陰」の部分も逃げずに描きます。 「捨てられる犬や猫」「飼い主が高齢になりペットを手放さざるを得なくなること」「犬や猫の譲渡会の現状」「飼い主に恋人ができて関係性が変わっていくペット」「歩けなくなりおむつを着けた老犬」「人間とペットの寿命の差」「ペットの死」「一度ペットと死に別れると、もう悲しい思いをするのは嫌だから二度とペットは飼わない」。 そういった表現から逃げることなく全て描ききったうえで、それでも「大切な存在が遠くにいってしまっても、あなたと過ごした楽しい思い出は“お互いに”残りつづけるから、だからこそ今いっしょに遊ぼう」ということを子どもたちに伝えるのです。 「いっしょに遊ぼ♪」と1年間言い続けてきたキュアワンダフルのセリフが、この終盤にきてさらに深い意味を持つことになったその構成は本当にすごいと思います。