「咳止め薬」だけじゃない! がんや糖尿病の治療薬も…世界規模の「薬不足」で"買い負け"の可能性も
咳止め薬、抗菌薬…薬価が安く、利益率が低い薬はメーカーも作りたがらない
インフルエンザが流行している今年の冬。薬不足も続いていて、不安な年越しになりそうだ。 【ヤバい…】かまいたち山内も試して3ヵ月で8㎏減 糖尿病治療薬を健常者がやせ薬として服用する本当のヤバさ 現在の薬不足について、都内の大病院で薬剤師を務め、一般社団法人asTasのボランティアとして、医薬品の供給状況を提供するDSJP(医療用医薬品供給データベース)を作成していた経験もあるS氏は、 「咳止め薬や痰切り薬の不足が言われていますが、通常、こうした薬は夏の間に作りだめしておきます。ところが、今年は夏からインフルエンザが流行したため、ためておくことができませんでした。 さらに夏には手足口病など子どもを中心とした感染症も流行し、現在、感染症に使う抗菌薬も不足しています」 こうした状況を見て、11月7日に、武見敬三厚生労働大臣は咳止め薬などを製造・販売している24の製薬会社に安定供給に向けた対応を要請したが、 「咳止め薬などは、もともと薬価が安く、利益率が低い薬品のため、製薬会社は作りたがらないのです」 さらに値下げ競争も激化し、売れば売るほど赤字になることもあるという。 「古くから使用されている咳止めは薬価が低く、しかも、薬価自体も下がっています。医薬品は国が全国均一の公定価格(薬価)を定めていて、以前は薬価は2年に一度見直されていたのですが、’18年から1年に一度見直されることになりました」 「見直し」といってもほぼ値上がりすることはなく、薬価改定は値下げと同じ。患者としてはうれしいが、医薬品メーカーは経営が厳しくなっているのだ。 「たとえば、がん治療薬のオプジーボは、’14年の発売当初は100㎎あたり73万円でしたが、その後段階的に引き下げられ、’21年には100㎎あたり15万5000円になりました。これでは、開発費などを考えると製薬会社はたいへんです」 ◆国の「ジェネリック薬」推進政策が仇に… 薬不足のきっかけとなったのは、’20年に発覚した後発薬メーカー、小林化工の不正だったといわれている。水虫などの皮膚病用の飲み薬に睡眠導入剤が混入した影響で、240人以上に健康被害が発生し、2人が死亡した。 それまで製薬会社への査察は、企業に事前に査察日を通告してから行うなど不正の隠ぺいを可能にするシステムになっていたが、小林化工の問題が発覚してからは、抜き打ち査察を行うようになった。その結果、続々と製造不正が発覚し、現在までに15社が業務停止などの行政処分を受けている。