「咳止め薬」だけじゃない! がんや糖尿病の治療薬も…世界規模の「薬不足」で"買い負け"の可能性も
なぜ、これほどまでに不正が起こるのか。 「一つにはジェネリック市場の拡大があると思います」 ジェネリックとは、先発医薬品の特許が切れたあとに作られる薬で、先発薬と同じ成分をもつが、開発費が少ないため、価格が低く抑えられている。 医療費の軽減や患者の負担軽減になることから、国が利用を推進し、多くのメーカーが参入してきた。’11年まではジェネリック薬品の使用率は40%だったが、’21年には80%近くまでになった。 「ジェネリック薬品メーカーには中小企業が多く、生産レーンも多く持ちません。Aという薬を作り終わったら、そのレーンを清掃してBという薬を作ったりします。限界に近い稼働を続けているので、ミスも起こりやすくなるのではないでしょうか」 しかし、薬不足はそれ以前から起きていたのだとか。 「薬不足の発端は、’19年2月に起きた『セファゾリン・ショック』。セファゾリンというのは、手術のときの感染予防などに使われる抗菌薬ですが、その原薬は海外から輸入されています。 日医工が輸入していた原薬に異物が混入していたことがわかり、供給が9ヵ月にわたってストップしてしまったのです。日医工は当時、セファゾリンの国内市場シェア60%を占めていたので、その供給が止まったことで大パニックになりました」 日医工では、その後も、品質試験で不適合となった錠剤を砕いて再加工するという違法行為が発覚し、業務停止命令が下された。その結果、薬不足に拍車がかかった。さらに10月には大手ジェネリック医薬品メーカー、沢井製薬でも医薬品に不正が発覚し、現在自主回収が進められている。 ◆世界中で薬の取り合いに…「がん治療薬」も「糖尿病治療薬」も不足 薬不足は日本だけのことではないともS氏は言う。 アメリカでは’11年から薬不足が懸念されていて、アメリカ食品医薬品局(FDA・日本の厚生労働省に似た役割を持つ)によると、抗生物質、がんの治療薬、麻酔薬を含む191種類の医薬品の在庫の不足状態が続いている状態なのだとか。