THE BEAT GARDENが語る、ドラマ主題歌が「俺たちの曲」になるまでの過程
ドラマ『六本木クラス』の主題歌「Start Over」のリリースから2年。あのチャンスを掴みとったTHE BEAT GARDENは、今も愚直に前へ進み続けている。今年の4月には、自身初となるZepp DiverCityでワンマンライブを実施し、改めて“THE BEAT GARDENらしさ”と向きあうことになったと語る。「好き勝手に揺れてほしい」という想いを胸に活動をスタートさせた彼らは、現在どのようなマインドで音楽と向き合っているのか。ワンマンライブ『good error』の振り返りを通してグループの核へ迫ると共に、ドラマ『あの子の子ども』の主題歌「わたし」について語ってもらった。 ―Zepp DiverCityで開催されたワンマンライブ『good error』は、みなさんにとってどのようなライブになりましたか。 U:本当に楽しかった。SNSの反応やチケットの売れ行きから「はじめましての人もけっこう来てくれるんだろうな」と想定していましたが、「たとえZeppでも、いつも通りのライブをしよう」と意識していたんです。とはいえ、MASATOがギタープレイを初披露したり、自分たちのなかで、めちゃめちゃ特別感があったんだろうなとは思うんですけど(笑)。 MASATO:結成から2、3年でZeppツアーが出来ちゃうアーティストもたくさんいるなかで、僕らは12年経ってZeppの舞台に立つことができて。その期間に、もどかしさを感じていた時期もたぶんあったと思います。でも、『good error』は、その12年間をすごく意味づけてくれた。自分たち、THE BEAT GARDENをすごく好きになれたんですよ、僕。これでよかったなって思えたし、これが僕たちのペースだと気づけたことが、経験としてすごく大きかったですね。僕たちがZeppのステージに立つことを、とても喜んでくれたファンの人たちもいましたし、そういう人をもっと増やしたいし、喜んでくれることをちゃんと求めていきたい。Zeppのステージに戻ってくることはもちろん、それ以上のことも実現したいと強く思いました。 U:何よりファンのみんなの大合唱が、今でも忘れられないんですね。MCでも「部屋にこもって一人で作った歌を、みんなで歌えるのってすごいことだよ」って話したんですけど、あれは用意していた言葉ではなくて。1つの目指すべき舞台に立ったとき、「これだけの人に愛してもらえるようになったんだ。喜んでもいいかな」と思えたので、自然とそんなことを口にしていたというか。「ライブってこれだよな」ってファンの人たちに思わせてもらった日でした。 REI:声や一体感はTHE BEAT GARDENの強みだと改めて気づかされましたし、大切にしていかなければいけないなと。個人的には、自分と向き合えたライブだったように思います。 ―ターニングポイントにもなりそうですか。 U:そうですね。『good error』が終わったあとに、3人で「THE BEAT GARDENのライブにおける成功ってなんだろう」と話していたら、「みんなで歌うことじゃないか」という結論に至って。僕らはJ-POPをやっているし、ライブには歌に共感した人が集まってくれているわけだから、みんなで大合唱できれば俺らのピッチがいくらズレていようが大成功だよって話をしたんです。そういう意味で、僕は『good error』が成功だったと思ってる。「Sky Drive」という曲が生まれ、自由に揺れてほしいという想いから、THE BEAT GARDENは始まりました。あれから10数年経って、いろいろなJ-POPに触れて、自分たちが思っているよりもみんなが口ずさんでくれたライブがあって、Zeppのステージに立てて。この10年間を歩んでいくなかで、3人が目指していたものが違う瞬間もきっとあったんですけど、『good error』のおかげでもう1回同じものを目指せるようになった気がしています。規模が小さかろうと大きかろうと、距離を感じずに大合唱する感覚を掴めたので。今の僕らにとっての正解は、みんなで歌うこと。だから、東名阪ツアーのタイトルを『FORTE』にしたんです。デカく歌おうぜって。 ―「好き勝手に揺れて欲しい」という想いからスタートして、J-POPを経た今は「一緒に歌おうぜ」にたどり着いたと。 U:不思議ですよね(笑)。きっと感動があったんだと思います。自分が絞り出して書いた言葉を覚えて、泣きながら歌ってくれるファンの人たちを見ると「マジか」ってなる。本当にすごい感覚なんですよ。今だに「そんなに大事にしてくれるの?」みたいな感動があって。なんなら自分たちが歌うよりも、みんなの歌を聴きたいくらい。それだけ、みんなの歌が好きなんです。 ―となると、現在の制作軸は「みんなで歌える曲を作っていきたい」といった感じでしょうか。 U:書きおろしでない制作に関しては「もし自分が作りたいテーマがなかったら、みんなで歌える曲にしよう」というテーマは設けましたね。THE BEAT GARDENであり、J-POPであり、みんなで歌えるっていう要素を、3人とも忘れずにいれていこうぜって。これからは、そういう曲がいっぱい生まれてくるんじゃないかな。 ―そのお話をしたのは、いつ頃ですか。 U:めっちゃ最近だよね。Zeppが終わって、1カ月くらい経ってからかな。 MASATO:けっこう常々話していますよね。 U:集まって「曲作りどう?」とか「かっこいいアレンジャーさん見つけたよ」って話をするたびに、自然と「これならアンセムのフレーズいれられるね」みたいな方向に向かっていくんですよ。今は話のゴール地点が、みんなで歌えるか歌えないかになってきてるかもしれないですね。 ―どのようなところで、みんなで歌える・歌えないを判定しているのでしょうか。 U:結局は、歌いたくなるかどうかじゃないですか。歌わせようとして作ったフレーズって、退屈なんですよね、やっぱり。自分が風呂場で歌いたくなるような曲って、別に歌いやすくはないし、なんならちょっと難しいところもある。でも、それを何回も練習して、歌えるようになるのが嬉しかったりして。 REI:それでいうと、引っかかりがあるフレーズが大事ですよね。繰り返し練習して歌えるようになる難しいフレーズって、「歌いたい」と思う引っかかりになるじゃないですか。他だと、1回聴いたら覚えられるっていうのも引っかかりだと思うし。そういう引っかかりは、持っててもいいのかもしれないですね。 U:テクニカルなところでいったらレンジじゃない? 今のTHE BEAT GARDENって、めっちゃキーが高いわけではないし、キーが高いフレーズを入れてみるのも良さそう。 MASATO:ちょっと角度は違うかもしれないんですけど、僕らが売れることも大切なことの1つだと思っています。歌っていて恥ずかしくなるアーティストって、口ずさむのも勇気がいるじゃないですか。だから、責任の1つとして感じていてもいいんだろうなって。 U:たしかに。身内や友達が僕を紹介するとき、「『六本木クラス』で「Start Over」を歌っていた人だよ」って、堂々と言ってくれる感じは自分も素直に嬉しいし。「Start Over」のように名刺になる曲を増やしていくことが、売れるということですから。とはいえ、現時点でTHE BEAT GARDENのファンでいてくれる人は、胸を張って僕らを応援してくれていると思うので。ライブに来てくれた人をひとりも置いていかない、キャッチーな活動をしていきたいモードではありますね。「ライブで声を出そう」という勇気を出させてあげるのは、僕らの役目。そういう空気を作れるように、やっていきたいです。 ―今のお話からすると、『good error』がTHE BEAT GARDENのベスト盤と呼べるようなセットリストになっていたのは、キャッチーさを追求したからでしょうか。 U:そうです。タイアップで僕らを知ってくれたかたが、自分たちの想像以上にライブへ足を運んでくれることが、チケットの券売でもわかっていたので、各媒体さんのランキングで何が聴かれているかを確認して、ベスト盤みたいな感じにしました。実をいうと、ランキングで自分たちの曲を贔屓することが、今まではちょっとかわいそうに感じていたんです。だって、歌われない子が、いっぱい出てくるじゃないですか。それが嫌でランキングに全然入っていない曲でも、あえてセットリストにいれたりもしていたんですけど、Zeppは素直にみんなで楽しめるライブにしたくて。できるだけ多くの人が歌える曲を中心に選びました。 ―だからこそ、ファンクラブ限定イベント『庭宴歌謡祭 Vol.2』では、マイナーな曲を中心としたセットリストになったんですね。 U:まさに! あれも楽しかったよね。 REI:楽しかったですね。 ―THE BEAT GARDENの魅せかたが定まってきている感じがしますね。 U:そうかも。Zeppとファンクラブライブができたのは、大きかったですね。うちの社長も僕らのファンクラブイベントを観て「こいつらおもろいな。YouTubeやってんの?」って言ったらしいんですよ。僕らの面白さが伝わるくらい、ファンクラブのみんなの前ではおうちみたいな感覚でいられたというか。それこそ、住処みたいな。特にMASATOは、そうなんじゃない? MASATO:さらけ出してやりましたね。もう失うものはないくらい(笑)。 U:あそこではね。 MASATO:初めてステージに寝転がりましたもん。