NHKドラマPが語る「“女性の生きづらさ”を描くドラマが増えた」訳 話題作「燕は戻ってこない」を制作した背景
「多様性というのが、NHKの制作の大きなキーワードのひとつにはなっています。挙げていただいたドラマやそれに類似する企画が提案されたとしても、考えるべき問題として捉えてもらえるようになったというか、突拍子もない意見・急進的な意見とされることはなくなってきました。 私はいまや中堅と言われる年次ですが、『VRおじさんの初恋』や『%(パーセント)』は私より若い局員の提案が通った例でもあります。昔以上に、色んな人たちの意見を吸い上げてドラマを作ろうという気運が高まっていることを感じます」
■何かを糾弾しようとして作っているわけではない そして、その変化を受け入れる土壌は、局内だけではなく視聴者の中にも醸成されつつあるのかもしれない。 「『燕は戻ってこない』は、テレビドラマとしては正直、好き嫌いが割れるかもしれないと思っていたんですが、好意的な意見をたくさんいただいていて、嬉しく思っています。 登場人物を限定的にでも肯定する声が多く、物語が他人事じゃなくなっているというか、この人たちの行く末を見届けたいという感覚になってくれているんだと思います。
『虎に翼』もチャレンジングな朝ドラですが、かなり肯定的な意見が多いですよね。もちろん、想いが強ければ、そこに反論も生まれることもあるとは思います。 ただ、少なくとも私はそうですし、他のNHKのドラマスタッフも同じだと思いますが、決して何かを糾弾しようとしてドラマを作っているわけではない。ただ、そこに問題意識があるから、ドラマとして結実しているんだと思います」 その問題意識は視聴者にも伝播し、“簡単には答えの出ない問題”を考え続けるきっかけを与えてくれている。
霜田 明寛 :ライター/「チェリー」編集長