アンチ巨人を生んだ江川事件後に導入された逆指名やFA制度、結局「巨人一強」「セ・リーグ主導」を補強することに
■ FA選手の移籍先でも目に付く巨人の突出ぶり FA制度が導入された1993年から制度改革前の2007年までの球団別のFA移籍で獲得した選手を見てみよう。いかに当時のNPBのFA制度がいびつなものだったのかが一目でわかる。 ■セ・リーグ 巨人 12人 1993年/落合博満←中日 1994年/広沢克己←ヤクルト 1994年/川口和久←広島 1995年/河野博文←日本ハム 1996年/清原和博←西武 1998年/江藤智←広島 1998年/工藤公康←ダイエー 2001年/前田幸長←中日 2005年/豊田清←西武 2005年/野口茂樹←中日 2006年/門倉健←横浜 2006年/小笠原道大←日本ハム 阪神 6人 1993年/石嶺和彦←オリックス 1994年/山沖之彦←オリックス 1998年/星野伸之←オリックス 2001年/片岡篤史←日本ハム 2002年/金本知憲←広島 2007年/新井貴浩←広島 中日 5人 1994年/金村義明←近鉄 1998年/武田一浩←ダイエー 2000年/川崎憲次郎←ヤクルトスワローズ 2001年/谷繁元信←横浜 2007年/和田一浩←西武 横浜 2人 1993年/駒田徳広←巨人 2002年/若田部健一←ダイエー ■パ・リーグ ダイエー・ソフトバンク 7人 1993年/松永浩美←阪神 1994年/工藤公康←西武 1994年/石毛宏典←西武 1996年/田村藤夫←ロッテ 1997年/山崎慎太郎←近鉄 2004年/大村直之←近鉄 2006年/小久保裕紀←巨人 西武 2人 1997年/中嶋聡←オリックス 2007年/石井一久←ヤクルト ロッテ 1人 1995年/仲田幸司←阪神 日本ハム 1人 2004年/稲葉篤紀←ヤクルト オリックス1人 2003年/村松有人←ダイエー 近鉄 1人 2001年/加藤伸一←オリックス この期間にFA移籍した38人中25人がセ・リーグ、13人がパ・リーグの球団に移籍した。そして巨人は最多の12人を獲得した。セ・リーグでもヤクルト、広島はFA移籍で出て行く選手はあっても、FA選手を獲得することはなかった。 巨人には落合博満(中日)、清原和博(西武)、江藤智(広島)、工藤公康(ダイエー)、小笠原道大(日本ハム)などリーグを代表するスター選手が移籍した。 つまり日本のFA制度は、巨人、阪神、ダイエー・ソフトバンクなど資金力がある球団に、他の球団から主力選手が移籍することに他ならなかった。 MLBではFA制度がビジネスモデルを大きく変えたのに対し、NPBのFA制度は、従来の「巨人一強」、セ・リーグ主導の態勢を補強したに過ぎなかった。 現在、MLBとNPBの「経済格差」は大きく広がっているが、筆者はその契機となったのは約30年前のFA制度導入にあったと見ている。
広尾 晃