松本サリン事件の教訓探る 松本で集会 27日で30年
長野県松本市北深志1の住宅地で猛毒のサリンがまかれ、死者8人、負傷者約600人の被害を出した平成6(1994)年の松本サリン事件から27日で30年となるのを前に、当時事件の取材に当たった元信越放送の召田政春さん(73)=長野市=の講演会が1日、同市中央1の市Mウイングで開かれた。召田さんの講演やパネルディスカッションに約100人が耳を傾け、事件の教訓を探った。 事件では第一通報者の河野義行さんを犯人視する報道が相次ぎ、マスメディアは翌年の地下鉄サリン事件発生後まで報道姿勢を変えようとしなかった。信越放送はその後も、約2カ月間河野さんに謝罪しなかったが、召田さんは「えん罪報道が根拠が薄い段階で出た以上、謝罪をするのも無実の根拠がそろわない限りできない」という当時の報道部長の判断があったと明かした。 後半はパネルディスカッションがあった。松本美須々ケ丘高校の元教諭で放送部員とともにテレビ報道を検証する番組を制作した林直哉さん(67)=安曇野市三郷明盛=の進行で、召田さんを含め4人のパネリストが報道のあり方を問い直した。パネリストからは警察と信頼関係を築き、リーク情報をつかむ取材方法を「癒着」と評し、疑問視する意見が挙がった一方、「国民の知る権利に奉仕するのがマスコミ」「間違うことを恐れず取材・報道してほしい」とする意見もあった。 講演を聞いた永沼則雄さん(71)=松本市浅間温泉2=は「当時から報道に疑問を感じていた。間違いは仕方ない部分もある。当時を検証する機会になったと思う」と話していた。
市民タイムス