ミスタースワローズ継承者、ヤクルト・山田の覚悟 青木の引退試合で号泣
2年連続で5位に低迷し、巻き返しを目指す来季の高津ヤクルト。先発陣を含めた投手陣の整備など急務な課題は数多いが、中でも鍵を握るのは主将・山田哲人内野手(32)の完全復活だろう。本来の姿には遠かった今季の現実から目を背けず、ミスタースワローズを受け継ぐ者としての覚悟に迫った。 ◇ ◇ 「ヤり返せ」のスローガンの下、覇権奪還を目指したチームだったが、春先から故障者続出の負の連鎖は最後まで断ち切ることができなかった。62勝77敗4分け。2年連続Bクラスの5位で1年が幕を閉じた。その責務を誰よりも感じているのが、主将・山田だろう。 振り返れば、ケガから始まったシーズンだった。開幕戦で下半身を故障。走塁中の出来事だった。「ケガをしない」と誓い、2月の春季キャンプでは杉村打撃コーチが「努力を人に見せない子だけど、今年はなりふり構わず。毎日ずっと打っているしさ。いつものキャンプとは全然違うよ」と目を見張るほどの猛練習。だからこそ、山田のショックは計り知れない。「(開幕)1発目で崩れ落ちたっていうか…」。強い思いが打ち砕かれるのは一瞬だった。 約3週間で1軍には戻ったが、5月6日には2度目の離脱。最短での昇格にはなったが、山田は“後遺症”を抱えながら戦っていた。「頭の中で何回もケガをする。実際にはしていないよ?でも脳が覚えている。そんな感覚を覚えてしまって」。春先から追い込み続けた主将にとって、いきなりの離脱は体以上に“心”を苦しめた。 それでもマイナス思考にはならなかった。やってきたメニューが合っていたのか、合っていなかったのか。情報量がありすぎる現代だからこそ、生きてくるのが経験でもある。「悩みはもちろんある。それは自分の直感で判断しないといけない」と言い、今オフのテーマにたどり着いたのは「走り込み」だった。 「やっぱりトレーニングだけじゃなくて、自分には走り込みが必要だなっていうのを気づかされたっていう1年でもあるので。マイナスのイメージばかりになってしまいそうですけど、前を向いてプラスに捉えるなら、そういうのが大事だと新しく発見できたっていうのは、このオフにしっかり生かしたいと思う」 チームの精神的支柱でもあった青木が引退し、引退試合では山田も人目をはばからず涙した。「練習中から、ノリさんと一緒に野球できるの最後か…と。キャプテンになる時も、『何か変えなくていい、哲人は今まで通りの哲人でいいんだよ』と言ってくれたのを思い出しました」。ミスタースワローズとして、立ち止まっているわけにはいかない。(デイリースポーツ・松井美里)