納税しなければ「永住許可」“取り消し”に? 突然の法案に戸惑う声も…「移民受け入れ」推進する政府の“思惑”とは
突如として表に出た“永住許可取り消し案”
外国人事件の経験が豊富で入管の問題にも詳しい丸山由紀弁護士は今回の法改正の問題について、「日本は外国人の労働力を必要としており、実際に移民の労働力に頼ってきながら、政府はその事実を認めようとしてきませんでした」と話す。 「むしろ、必要なときだけ受け入れ、不要になったら出ていかせることができる存在にとどめようとして、管理を強化してきたという経緯があります。今回の法案は、永住者をも、そのような管理の対象にしようとするものです」(丸山弁護士) 外国人の永住許可の取り消しについては、政府(入管庁)は以前から検討していたという。 2022年6月14日に発表された、外国人材の受け入れ・共生に関する関係閣僚会議の「外国人との共生社会の実現に向けたロードマップ」には、「……永住許可後に永住者としての要件を満たさなくなったと思われる事案に対処できる仕組みを構築する必要がある」と記載されていた。同日に発表された「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策(令和4年度改訂)」にも、永住者のあり方について見直し・検討を行っていくという旨の記載がされている。 しかし、上記のロードマップでは、2024年まで調査・検討を行い、実施は2025年からとなっていた。また、調査・検討の状況は、これまで一切公表されていなかった。永住許可の取り消しに関する具体的な提案は、2月9日に発表された方針で、突如として表に出たかたちになる。 通常、重要な法律を改正する際には段階的な手続きがふまれる。永住許可の取り消しと同じく今国会で成立が目指されている共同親権の導入についても、有識者会議や審議会が行われてきた。「反対運動が盛り上がる前に法案を通してしまおう、というねらいがあるのではないか」と丸山弁護士は危惧した。
移民受け入れに消極的な層を説得するための「取り引き」?
入管は、永住者が納税を怠る事例があることを強調する。しかし、外国人の税や社会保険料の滞納が日本国籍者よりも有意に多いことや、最近になって増えていることを証明する客観的な資料や統計は示されていない。 では、なぜ数年前から永住許可の取り消しが検討されているのか。丸山弁護士が示唆するのは、将来的に「特定技能2号」の在留資格で受け入れる外国人の数を増やしたいと考えている政府(自民党)が、移民受け入れに消極的な層を説得するための“取り引きの材料”として、永住許可の取り消しを持ち出しているという可能性だ。 つまり、現に永住許可を受けている外国人の側に問題があるのではなく、経済のために移民の数を増やす政策と「移民に反対する層の支持を失いたくない」という思惑を両立させるために、政府の支持層のあいまいな“不安”を優先して参政権を持たない外国人たちの具体的な人権を制限する、という構図があるかもしれない。