子どもたちに感動と体験の環境教育を 里山で孫と歩む震災からの再建 能登の「ケロンの小さな村」
自然体験村「ケロンの小さな村」は、元教員で農事組合法人能登ふれあいガーデン代表の上乗秀雄さん(80)が、妻の純子さんとともに、石川県能登町の耕作放棄地を自らの手で開墾し、2009年にはじめました。 【写真】「ケロンの小さな村」の風景はこちら 農作物をつくる人・食べる人・大地の「三者健康農業の実践」と「小規模農家の自立策の模索」を目標に、ビオトープやツリーハウスを整備し、⾃然体験や環境学習の場を提供するほか、⾃家⽣産の⽶を⽶粉にしてパンやピザを販売するなど6次産業化にも取り組んでいます。2019年には、内閣官房・農林水産省が認定する「ディスカバー農山漁村(むら)の宝」に選ばれました。 2024年1月の能登半島地震では、山を散策できる「森の学校」の道が崩落し、水車小屋やパンの石窯が壊れるなどの被害を受けましたが、孫で後継者の拓夢さんとともに、再建への歩みを進めています。
ドイツ・メルディンゲン村の視察で感銘を受け
「ケロンの小さな村(以下、ケロン村)」は、能登空港から珠洲方面へ車で10分ほどの能登町斉和地区の自然豊かな谷間にあります。珠洲道路沿いに立てられたカエルの「ケロン」が描かれた看板が目印です。 約1000坪の敷地には、小川や澄んだわき水が流れる水路があり、田畑や庭園、パン工房や粉ひき小屋などのログハウス、手作りの木製遊具などがあります。
入場は自由で、子どもたちはカエルや昆虫などの様々な生物を観察したり、水遊びを楽しんだり、自然の中で思い思いの時間を過ごすことができます。土日祝日のみ営業する自家製の米粉や野菜を使ったピザ作り体験も人気で、年間5000人ほどが訪れます。 上乗さんは、ケロン村の強みについて「ここには、わき水があり、川があり、山があり、田畑や作物があり、それらが循環し、一つの村として完結していること」と話します。 雪深い冬期は休業となりますが、上乗さんは毎日のようにケロン村に足を運び、作業を続けます。「理想にはまだまだ」と微笑みますが、ここまで来るのは、決して平坦な道のりではありませんでした。