国民年金だけでは「老後6000万円問題」になる当然の理由
● 「老後資金2000万円不足」 どころではない!? かつて「老後資金2000万円不足問題」が社会でトレンドとなり、老後のために夫婦で2000万円の預貯金が必要との話題が社会で広まった。その根拠となったのが金融庁金融審議会市場ワーキング・グループ報告書『高齢社会における資産形成・管理』(2019年6月3日)だ。 それによると、夫65歳以上及び妻60歳以上の夫婦のみの無職世帯家計において、平均実収入(約21万円)と実支出(約26万円)を差し引くと、毎月平均約5万円の不足が生じるという推計が示されたのである。そして、残りの人生が20~30年とすれば不足額の合計が約1300万~2000万円という試算になるというのである。 ● 厚生年金受給者ですら 安定した老後の保証はない かつて民間事業所の勤め人であった厚生年金受給者を、「第1号厚生年金被保険者」という。また、第2号は国家公務員、第3号は地方公務員、第4号は私立学校教職員とされている。 基本的に年金支給開始(受給)は65歳からとなっている。ただし、一部、本人の意思で繰り上げ受給(65歳以前でも受給できるが金額が減少)、もしくは繰り下げ受給(65歳以降で受給すると金額が増加)といった選択をすることもできる。
2022年度末時点で第1号厚生年金被保険者における男性65歳以上の平均受給額は月々約16万7000円となっている。 しかし、女性は勤め人として働いていたとしても、一部の人は産休・育休などをとらずに退職してしまう者も少なくない。そのため、女性65歳以上の平均受給額は月々11万1000円に過ぎない。子育てが落ち着いて、再度、働いたとしても男性に比べ厚生年金の保険料納付期間が短くなり、結果、受給額が低くなる傾向だ。 なお、超少子高齢化の影響によって年金受給額は年齢が下がる(若くなる)につれ減額傾向である。年金を単純に損得勘定で考えると、若い人のほうが不利となる。いくら勤め人として働いて厚生年金受給者となっても、安心した老後の収入を得る保証はない。特に、女性が社会進出することで共働きが主流となってきてはいるが、実際の年金受給額においてはかなりの差がある。 ● 国民年金だけでは 生活保護より困窮する 農家や自営業などであった老齢基礎年金(国民年金)のみ受給者の場合、受給額は月々平均5万1000円に過ぎない。そのため、高齢者は仕事を辞めてしまうと一挙に収入が減ってしまい、年金受給額だけでは家計を維持するのは厳しくなる。