「台湾の秋葉原」に日本カルチャーの波。メルカリ台湾版は1カ月で会員5万超に
メルカリが台湾での越境取引事業を加速する。8月末に公開した台湾版メルカリ「美露可利」は1カ月で登録者が5万人を超えた。さらなる認知獲得に向けて、本格的な拡大戦略を開始する。 【全画像をみる】「台湾の秋葉原」に日本カルチャーの波。メルカリ台湾版は1カ月で会員5万超に 台湾は人口約2300万人と小さいものの、メルカリが越境取引を展開する国や地域の中では取引金額・件数が2番目に大きい。台北の街を歩くと、日本発商品の市場としての可能性の大きさが見えてくる。
地下街にフィギュア、「購入代行」商店も…
「台湾の秋葉原」とも呼ばれる台北地下街には、キャラクターグッズを扱う店舗がずらりと並ぶエリアがある。 現地で人気のキャラクター商品もあるものの、ポケットモンスターやちいかわ、ワンピース、VTuberグループのホロライブなど、ほとんどが日本発の商品だ。雑誌やフィギュア、CD、ぬいぐるみなど、商品は多岐にわたる。 こうした日本のアニメ・キャラクターグッズが購入できる店の中には、日本のECサイトでの買い物の代理購入を請け負っている店舗もある。店先の看板には「日本各大網站代購(日本の大手サイトからの購入代理店)」と書かれている。 メルカリによると、こうした商店に並ぶ商品は店の経営者が日本人の知人を通して手に入れているケースや、越境ECサイトを通じて仕入れている場合が多いとみられる。 事業者向けのEC事業を手掛ける大手・ラクーンコマースによる日本の商品を海外事業者に販売する越境サイト「SD export」では、取引が最も多いのは台湾で、4割弱を占める。同社によると、個人商店の経営者からの購入が多いという。
メルカリ台湾で越境強化のわけ
日本のコンテンツの人気や、「メイドインジャパン」「ユーズドインジャパン」の品質への信頼も相まって、越境EC市場は伸びている。ヤフオク!やメルカリ、楽天、ZOZOTOWNなどの大手モールとも提携する大手越境ECサイト・Buyee(バイイー)を展開するBEENOSでは、Buyeeを中心としたグローバルコマース事業の流通総額が前期比29.6%伸長した。決算資料によると、特に台湾と北米での伸びが顕著だったという。175の国と地域に出荷する別の越境EC事業者・ZenGroupでは、売上高が2年で約1.5倍に伸びた。 メルカリは2019年から越境事業を開始した。日本版メルカリに出品された商品を海外からも購入できるというもので、前述のBEENOSやZengroupなどが決済や発送のパートナー企業として提携している。越境取引で展開する国や地域は120に上り、メルカリによると取引金額はこの1年で3.5倍に増えた。 「台湾は非常にマーケティングのタッチポイントも明確で、日本にいらっしゃる方も多く、特に日本に興味を持っている人の比率も高い。 売り上げの絶対額では中国の方が大きいが、人口比では台湾の方が大きい」 執行役員General Manager Cross Borderの迫俊亮氏は、台湾市場のポテンシャルをこう語る。台湾はメルカリが越境取引を展開する中で、中国に次いで2番目に取引金額・件数が多い地域だ。 今、メルカリで取引されている商品のうち、4割がキャラクターグッズやトレーディングカードなどの「エンタメ・ホビー」カテゴリ。台湾で人気の高い日本関連商品もこうしたホビー系で、台湾の消費者ニーズに合致する。 メルカリはこうした事情を踏まえ、台湾市場への直接参入を決めた。台湾版のメルカリ(美露可利)は、繫体字・金額も台湾ドルで表記されたウェブサイト上で商品を閲覧・購入できる。購入時には従来の越境取引パートナーの購入ページに遷移し、実際の取引や配送は依然として越境取引パートナーを介して実施される。 このような形で一部を内製化したことについて、迫氏は 「間接的にやっていると、お客様がサイト上でどのように行動し、どこで離脱しているのかといった細かい情報が分からない。自社のウェブサイトで展開すればお客様の行動がちゃんと見えますし、ペインを理解することができる」 と話す。
土屋咲花