[本田泰人の眼]中国戦を見ていて覚えた“違和感”とは――苦手な“中東のアウェー”でも敵をねじ伏せるくらいの格の違いを見せてほしい
点数をつければ100点に近い
2026年ワールドカップのアジア最終予選が始まった。 最終予選の初戦は、日本にとって鬼門だった。2016年9月にUAEに1-2、21年9月にオマーンに0-1と、過去2大会で黒星を喫しているからだ。 【画像】日本代表の中国戦出場16選手&監督の採点・寸評を一挙紹介。5人が最高評価の7点。MOMは3点に関与した20番 ご存知のとおり、今回の初戦、日本は中国をホームに迎え、7-0とゴールラッシュを演じた。三笘薫が復帰した攻撃陣は、中国をまるで子ども扱いするかのように、楽々とボールを回しては、終始ワンサイドゲームを展開したのだ。 もっとも、中国との実力差を考えれば、当然の結果だ。相手は国内組のみのメンバーで、最初から自陣に引いて守るばかりでカウンターも迫力不足。「日本に一泡吹かせてやろう!」という意欲すら感じられなかった。日本が90分を通して許したシュートは1本のみ。スパーリングパートナーとしても物足りなかった。 とはいえ、同日に韓国がパレスチナと0-0の引き分け、オーストラリアがバーレーンに0-1、カタールがUAEに1-3で敗れるなど、初戦で取りこぼしているチームもあるなかで、日本は圧勝。文句のつけようがない。点数をつければ100点に近い。 ターニングポイントは、CKから遠藤航が決めた先制ゴールだ。繰り返しになるが、中国はブロックを作って引いて守り、なるべく無失点の時間を長くしたかったはずだ。セットプレーから遠藤のヘディングシュートが決まったのは12分だったが、ずっと点を取れていなかったら、中国に守備のリズムを作られ、もっと苦戦していたかもしれない。 この中国戦を見ていて“違和感”を覚えたのは、最終予選の緊張感があまり感じられなかったことだ。 その理由はなぜか――ピッチでの攻防を見ながら考えていたのだが、1つはレギュレーションの変更にあるのではないか。 今大会からワールドカップ本大会の出場国数は「32」から「48」に大きく増加する。これに伴い、アジアの出場枠は、ストレートインできる8枠に、大陸間プレーオフの0.5枠を足して「8.5」となった。 最終予選には、2次予選を突破した18チームが出場。6チームのグループが3つ。ホーム&アウェーで対戦し、各グループの上位2チームが出場権を獲得する。 またグループ3位と4位は4次予選へと進む。3チームのグループが2つ。各グループの1位が本大会に出場する。さらにここで敗退しても...両グループの2位は5次予選へ進み、ホーム&アウェー方式の大陸間プレーオフで最後の「0.5」枠を争う。 つまり、何が言いたいかというと、このように本大会に出場できるチャンスが広がったからこそ、最終予選では上位2位を目ざす国もいれば、3~4位を目ざす国もいるのではないか、ということだ。 過去の最終予選では上位2位に残るため、どの国も必死になって戦ってきた印象が強い。しかし、中国との初戦を見るかぎり、レベルが低いなりの必死さが伝わってこなかった。ファウル覚悟のプレーがまったくなかったのが不思議だ。ファウルすら取れないほどフィジカルの違いがあったのなら、それはそれで大問題で、中国は最終予選に進出するレベルではない。 改めて同じグループの対戦国を見てみると、オーストラリア、中国、バーレーン、サウジアラビア、インドネシア。FIFAランキングを見ても日本の18位に対して、オーストラリアは24位、サウジアラビアは56位、バーレーンは80位、中国は87位、インドネシアは134位だ。「ワールドカップ優勝」を目ざすならば、ただの一敗も許されない。 これまで日本は最終予選において“中東のアウェー”を苦手してきた。現地10日に行なわれるバーレーン戦がまさにそれ。第3戦目も敵地でサウジアラビアと戦う。 中国との“ウォーミングアップ”を経て、いきなり正念場を迎えることになるが、アウェーゲームだからといってひるまず、果敢に挑んでねじ伏せるくらいの格の違いを見せてほしい。それを実現できるだけの実力は十分にあると見ている。