「獰猛」だった野生のキツネがたった数十年で「温厚」に!?…ついに解明された”家畜化症候群の謎”
解明された家畜化症候群と遺伝子の関係
家畜化症候群と遺伝子の関係は、近年ようやく解明された。これまでは、なぜ友好的で協調性の高い個体の選択―意図的な選択も自然の選択も含めて―が家畜化症候群を引き起こすのか、まったくの謎だった。攻撃性が減ると耳が垂れたり、白い模様ができたりするのはなぜ? しかし、最近になって、「神経堤細胞」という特殊な幹細胞が謎の解明の鍵であることがわかった。神経堤細胞は胚発生の初期段階で副腎を形成する。ストレスホルモンや不安のホルモンの産生と調節に関係する重要な臓器だ。 そして結局のところ、家畜化とは、副腎の機能不全を間接的に引き起こすプロセスなのである。脊椎動物の胚発生の初期段階では、神経堤細胞は特定の位置にある。具体的には、神経管の背側(つまり後ろ)の端だ。そこから中枢神経系が発達する。胚が成長するにつれて、この細胞は副腎だけでなく、頭蓋骨や四肢にも遊走する。神経堤細胞は“たまたま”頭蓋骨や歯の発育に関連し、色素の沈着にも影響するため、白い染みができたり、鼻が短くなったり、歯が小さくなったりする。 つまり家畜化症候群は、副腎の特殊な機能不全につながる選択が行われた結果なのである。この機能不全は、恐れや攻撃性を調節するホルモンと、頭蓋骨の発生、色素沈着不全、あるいは成長の抑制につながる細胞種の両方に影響する。 『「白目」は「暴力的メンバー暗殺」の名残!?…人間の「家畜化」に一役買った、その“誰も知らない”関係』へ続く
ハンノ・ザウアー、長谷川 圭
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