逆転の舞台裏 兵庫知事選候補者乱立で非斎藤票は分散、政党主導権争いに嫌悪感
斎藤元彦前兵庫県知事(47)の失職に伴い17日投開票された知事選は「斎藤か斎藤以外か」の構図のもと、各党がそれぞれ意中の候補を裏方支援するという異例の展開をたどった。知事の資質を最大の争点としたほぼ「ワンイシュー(単一の問題)」の戦いに持ち込んだものの、「非斎藤」側の候補が乱立して票が分散。終盤にかけて猛追した斎藤氏が当選した。 【ひと目でわかる】兵庫県知事選を巡る主な政党の支援の構図 「斎藤か斎藤以外か。私は絶対、それに負けるわけにはいかない」。斎藤氏は選挙戦初日から繰り返しこう訴え、改革を継続するとして支持を求めてきた。 斎藤氏自らが言及する構図は、県議会において形づくられたものだ。告発文書問題への対応を巡り「資質を欠く」として、各会派は全会一致で斎藤氏に対する不信任を決議した。ただ、決議に至るまでには会派間の主導権争いなども垣間見え、斎藤氏だけではなく、打算含みの政党の立ち回りも県民の政治不信を招く一因となった。 こうした事情もあり、兵庫県知事選で過去最多となる7人の候補は、いずれも政党の公認を受けない無所属。政党推薦も医師の大沢芳清氏(61)を支援した共産党のみだった。 ■結束できなかった「非斎藤」側 斎藤氏が知事に適任か否か-。ワンイシューの選挙戦で「非斎藤」側が結束すれば、戦いを有利に進められたはずだが、実際はそう簡単ではなかった。 斎藤氏の対立候補として最有力とされた元同県尼崎市長の稲村和美氏(52)については、立憲民主党や国民民主党の各県連幹部が支援する意向を表明。自民党県議の一部もついたが、他党は稲村氏支援でまとまらなかった。 当初公認候補を擁立する方針だった日本維新の会も、白羽の矢が立った前参院議員の清水貴之氏(50)が「党派を超えて幅広い支持を得たい」として離党した上で立候補。維新は公認も推薦もしない「支援」という形を取った。 告示直後、自民神戸市議団が清水氏と政策協定を締結。自民の地方議員の一部は「消去法」で斎藤氏支援に回ったが、陣営幹部は「維新から出馬しなかったことで維新支持者が離れる一方、維新色が見え隠れし、党派を超えた支持を得るのが難しかった」と漏らした。 「斎藤か斎藤以外か」の構図は、インターネットを中心に逆境の斎藤氏への同情を呼ぶ「判官びいき」の世論も醸成した。斎藤氏の街頭演説には他陣営にはみられない群衆が形成され、支持急拡大を象徴する場面となった。