逆転の舞台裏 兵庫知事選候補者乱立で非斎藤票は分散、政党主導権争いに嫌悪感
「反斎藤」で一致しながら個別の対応はバラバラの各党の動きが、四面楚歌(そか)だった斎藤氏の猛追を許した点は否めない。今回は知事の資質だけでなく、既成政党の存在意義も問われる選挙だったといえる。
■斎藤氏、議会との関係修復が焦点
兵庫県知事選のきっかけとなった斎藤氏や県幹部の疑惑を告発した文書に対し、斎藤氏は今年3月の記者会見で「噓八百」などと非難していた。以降、斎藤氏の対応に批判が集まり、辞職を求める声が高まったほか、側近幹部の辞任や降格が相次いだ。県政は半年以上にわたって停滞しており、斎藤氏には今後、自身に不信任を突き付けた県議会との関係修復など、解決すべき課題が山積している。
斎藤氏は内部調査の上で、5月に告発者の男性=7月に死亡=を懲戒処分とした。しかし、調査の客観性が問題視され、県議会が6月、調査特別委員会(百条委員会)を設置。斎藤氏自身も証人尋問に出頭するなど対応に追われた。
一方、副知事として県の重要施策を取り仕切ってきた片山安孝氏は、県政混乱の責任を取る形で7月に辞職。斎藤氏の側近幹部2人も体調不良などを理由に要職を外れ、組織内に混乱が生じた。
すでに最初の会見から8カ月、斎藤氏の失職で知事不在となってからも2カ月近くが経過した。来年度の当初予算案編成などが迫っており、「短期間で進めていく必要がある」と県幹部。県庁舎の建て替えといった重要施策も早急に議論を進める必要があるが、県議会の賛成を得られなければ前に進められないものも多く、議会との関係が大きな焦点となる。
一方、斎藤氏の再選で告発文書問題も終わったわけではない。今月18日に百条委が開かれ、今後も証人尋問などが続く。県が設置した第三者委員会も今年度中をめどに報告書をまとめる予定で、斎藤氏はこの問題と向き合っていく必要がある。(小林宏之、喜田あゆみ)