中国の「空飛ぶクルマ」、商用運航実現へあと一歩 イーハン、7~9月期の納入機数が63機に急増
「空飛ぶクルマ」の開発を手がける中国の億航智能(イーハン)の経営が新段階に入ってきた。同社は11月18日、2024年7~9月期の決算を発表。同四半期の売上高は1億2800万元(約27億3551万円)と前年同期の約4.5倍に増加し、四半期ベースの最高記録を更新した。 【写真】イーハンが開発した「EH216-S」の耐空証明の受領式典 売上高の大幅な伸びを牽引したのは、同社の主力機種「EH216-S」の販売急増だ。7~9月期の納入機数は63機に上り、前年同期より50機も増加した。
空飛ぶクルマは「eVTOL(電動垂直離着陸機)」とも呼ばれ、都市部の航空交通の新たな担い手として期待を集めている。EH216-Sは中国民用航空局から耐空証明(訳注:航空機の安全性について国の基準に適合しているという公的な証明)を取得した現時点で唯一のeVTOLだ。 ■地方政府が相次ぎ購入 イーハンが7~9月期に納入したEH216-Sの買い手は、実は大部分が中国各地の地方政府傘下の国有企業だ。 「7~9月期には山西省の顧客に40機、安徽省合肥市の顧客に5機、浙江省文成県の顧客に3機を納入した」。イーハンのCOO(最高執行責任者)を務める王釗氏は、決算説明会でそう明かした。
これらの地方政府は地元での「低空経済」の振興を目指しており、手始めに遊覧飛行ビジネスを立ち上げようとEH216-Sを購入している。 (訳注:「低空経済」とは、主に高度1000メートル以下の低空域でeVTOLやドローンなどを駆使し、地域レベルの航空旅客輸送や航空物流の発展、関連産業の育成などを図る経済活動を指す) イーハンの損益は依然として赤字だが、損失額は縮小傾向にある。7~9月期の純損失は4810万元(約10億2795万円)と、前年同期より1900万元(約4億605万円)減少した。
同社のキャッシュフローは顕著に改善しており、営業キャッシュフローは4四半期連続のプラスを達成。手持ちの現金残高は9月30日時点で10億7800万元(約230億3815万円)となっている。 イーハンは目下、商用運航サービスの実現に向けた最後の関門に挑んでいる。中国民用航空局は2024年7月、「億航通用航空」および「合翼航空」の2社が提出した航空運送事業許可の申請を受理し、(eVTOLに対応した)専門チームを立ち上げて審査を進めている。