<春に挑む・’21福大大濠>支える人たち/下 寮監長・寮母 寮生に寄り添う掲示板 /福岡
福大大濠(福岡市中央区)から約1キロ離れた所に男子の学習寮「舞鶴寮」がある。玄関前のロビー右手の掲示板には何枚も張られた野球部の記事。寮監長の小田剛彦さん(59)は「野球部の活躍が他の寮生にもいい意味で影響を与えている」と語る。 7年前に寮監長となったOBの小田さんは、妻で寮母の知恵代さん(55)と野球部員14人を含む58人の寮生活を見守っている。寮には全国でも強豪のバスケットボール部や剣道部、柔道部だけでなく、運動部に所属していない生徒もいる。最低でも1日1~3時間の勉強時間が設けられ「学習室の席は成績順なんですよ」と小田さんは笑いながら話す。 小田さんは、シーツ交換や手洗い、うがいなど寮生に伝えるためまず掲示板を利用する。「高校生は多感な時期。私が『ああしろ、こうしろ』と言っても反抗したくなる。だからまずは掲示板に張って自分たちで改善してもらう」という。 野球部員は消灯時間ギリギリの午後11時半まで寮の中で素振りをしたりストレッチをしたり自主練習に打ち込む。選手同士の競争も激しく、なかには3年最後の試合でも背番号がもらえず、寮に戻って知恵代さんの顔をみて涙を流した選手もいたという。 昨秋の九州地区大会の時、野球部は寮にいなかったが、夜の点呼で結果や次の対戦相手を発表し、寮生全員で拍手をしエールを送った。 センバツは寮でテレビ観戦する予定だ。クラブ活動掲示板には「硬式野球部 甲子園球場 3月21日午前11時40分 大濠高校―大崎高校」と初戦の日程と対戦相手を書いた紙が張られている。知恵代さんが試合結果を記入すことにしている。 寮の仲間のセンバツ出場に小田さんは「寮にいる生徒はうれしいし、半分は自分たちも頑張ろうって気持ちになると思います」と話す。小田さんも寮生たちも毎日掲示板を見ながら、その日がくるのを楽しみにしている。【大坪菜々美】 〔福岡都市圏版〕