『カメ止め』再来の呼び声高い『侍タイムスリッパー』の魅力に迫る! 安田淳一監督&ヒロイン・沙倉ゆうのを直撃
■「本物の侍感がすごかった」主演・山口馬木也の演技が圧巻! ヒロインは正統派マドンナを意識
――映画では主演の山口さんが演じた高坂新左衛門がまるで本物の侍のようで圧巻でした。監督は山口さんにどのような役作りをお願いしたのですか? 安田:僕が時代劇に出ている馬木也さんのお芝居を見ていて、主演のオファーをしたんですが、撮影が始まったら、もう桁違いに芝居が上手かったんですよ。いわゆる「メソッド法」、気持ちから演じるキャラクターになりきって、そこから湧き出てくる感情でお芝居をするということが、達人みたいな領域でできる人だったんです。それは僕にとってはラッキーでした。撮影中は俳優・山口馬木也さんとやっているのではなく、侍・高坂新左衛門という江戸時代から来たご本人と一緒にやっているような感じでした。「僕はこう思いますが、高坂さんはどう思われますか?」みたいな話し方になっていましたね(笑)。そのくらい“はまり役”、本物の侍感がすごかったです。それと、終盤の(山口&冨家の)立ち回りのシーンは、日本の時代劇史上最も「真剣を使って立ち回りしている」と感じさせようと思っていました。刀を振る時に重たいものを振るような動作を取り入れながら、間(ま)を広めに取ることで緊迫感を出して、お客さんに状況を感じてもらおうと試行錯誤しました。 ――沙倉さんは山口さんが演じる新左衛門や立ち回りのシーンをご覧になっていてどう感じていましたか? 沙倉:カメラが回ってない時に山口さんとしゃべっていても、本当に山口さんか新左衛門さんかわからない時がすごくあったんです。立ち回りのシーンも、控え室ではいつものワイワイとした感じだったんですが、撮影が始まった途端に山口さんと冨家さんが放つ空気感が周囲に行き渡っていて…すごかったですね。本当に「侍が2人いる」という感じで、現場の空気が張り詰めていました。 ――本作では、沙倉さんが演じたヒロイン・山本優子の存在感も印象的でした。演じるにあたってご自身の役をどう捉えていらっしゃいましたか? 沙倉:優子は本当に時代劇が好きで、真面目に一生懸命に監督になりたいという夢を持って仕事を頑張っている女性。撮影現場ではピリピリした雰囲気の時や怒号が飛び交う時もありますが、そういうなかで潤滑油的に周囲を和ませる存在だと捉えていました。監督からは「真面目で一生懸命ひたむきな感じ」というリクエストがあって…。 ――優子はどこか古き良き日本のマドンナという印象を受けました。 安田:そうですね。僕は『男はつらいよ』にリスペクトがあるので、正統派マドンナ像をイメージしているところはあります。 ――助監督役を演じるにあたり、沙倉さんが役作りでされたことは? 沙倉:今回、実際に現場でも助監督をやらせていただいたんです。私自身、他の作品の撮影現場で助監督の動きを見ていたんですけど、どんな仕事をしているのかがあまりわからなかったんです。安田監督に聞いても「監督を助けるんちゃう?」と言われて、「そうなん?」みたいなやり取りもありました(笑)。なので、私なりに助監督像をイメージしながら、俳優さんたちが現場でやりやすいように意識して動いていましたね。