「電気椅子で死にたい。そうすれば遺族は安らげる」そう語る死刑囚の真意 死刑は残すべきか廃止すべきか、アメリカから考える②執行直前の14人と話した元矯正局幹部
中でもオズミントさんが忘れられないのは、元恋人の両親を殺害した罪で死刑が確定し、2008年に49歳で、電気椅子によって死刑執行されたジェームズ・アール・リード元死刑囚だ。 ▽自ら電気椅子を選択した理由 アメリカでは、連邦や州によってさまざまな執行方法が採用されている。圧倒的に多いのが薬物注射。この方法が最も人道的だと考えられているためだ。死刑情報センターによると、1976年以降で薬物注射は電気椅子の10倍近い。 リードの執行当時、サウスカロライナ州では電気椅子は何年も実施されておらず、とても珍しかった。リードは、その執行方法を自分で選んだ。 面会に来たオズミントさんに、リードはこう言った。 「いいんだよ、聞いていいんだよ」 オズミントさんら職員が、電気椅子を選択した理由を知りたがっていることを、彼は分かっていた。 促されるまま「なぜ電気椅子を選んだのか」と尋ねると、リードは自分が犯した罪の重さと恐ろしさを語ったという。
オズミントさんは当時を振り返り、リードの考えをこう代弁する。 「彼は、電気椅子で死ねば、被害者遺族に『被害者と同じ凄惨な死を遂げた』と思ってもらうことができ、それが彼らの安らぎにつながるかもしれないと考えていた。彼は『遺族や自分の家族が前に進むチャンスを与えたい』とも話していた」 遺族らへの思いを知り、彼を抱きしめて一緒に祈りを捧げたという。 ▽「教育」が更生を促した オズミントさんは、自分が接してきた死刑囚の多くが、死刑判決を受けたことで「真に改心した」と感じている。 「彼らは自ら『私は間違っていた。死刑に値する』と言えるほどの境地に達していた。このレベルの“更生”について思いを馳せてほしい」 遺族と死刑囚の双方が執行に同意する場面を「この目で見てきた」と語るオズミントさんは、こうした場合に、「死刑制度は機能している」と考えている。 更生することができる原因の一つに「教育」があるという。アメリカでは、死刑囚も行動認知療法などのプログラムを受けることができる場合がある。「死刑囚のほとんどは高校卒業資格を持っていなかったが、大学院レベルの学位を取得する人もいる。今は、タブレット端末を使って教育を受けることもできる。彼らは学び成長する。更生する理由や方法は千差万別だ」