スタートアップは「マイルドなカルト集団」なのか「チャーチ・セクト論」で分析した“驚きの結論”
「カルト」。(中略) 最高のスタートアップは、究極よりも少しマイルドなカルトと言っていい。 (ピーター・ティール、ブレイク・マスターズ〔関美和訳〕『ゼロ・トゥ・ワン 君はゼロから何を生み出せるか』NHK出版より) では、そもそも「カルト」とは何だろう? この理解を助けるのが、カルトと他の宗教団体を整理した「チャーチ・セクト論」である。 「チャーチ・セクト論」というのは、19世紀末から20世紀初頭にかけて活躍した世界的社会学者マックス・ウェーバーなどの研究に端を発し、その後、アメリカのラインホルド・ニーバーなどの神学者や宗教社会学者によって確立されてきた宗教団体の分類法のこと。
彼らの論では、宗教団体は次の4つに分類される。 ■「チャーチ・セクト論」では、宗教団体は4つに分類 【①チャーチ】 「国教」になるなど、世間に広く正当化された特権を持つ宗教団体のこと。その社会で十分な正当性を持つ宗教として確立している。イタリアやフランスにおけるカトリックが代表例。 【②セクト】 チャーチと袂を分かち、分派した団体。宗教改革のときにカトリックと決裂したプロテスタントは、当初はセクトあるいは「カルト」と認識されていたはずだ。
【③デノミネーション】 セクトの中でも、次第に社会で認知され、一定の正当性を得た団体。たとえばカトリック色の強いフランスでも、国民の1%はプロテスタントであり、「ユグノー」と呼ばれる。現代フランスではユグノーに対するカトリックの敵対心も薄れ、社会的に認知されているので、ユグノーはデノミネーションに該当するといえる。 【④カルト】 セクトの中でも、特に教義の内容が純化・先鋭化し、結果として時に反社会的と受け止められ、社会から正当性を得られにくい宗教団体。
この分類を踏まえると、ベンチャー企業は「究極よりも少しマイルドなカルト」というピーター・ティールの主張も、理解できるのではないだろうか。 ■革新的ベンチャーほど、社会から正当な評価を受けにくい ベンチャーは新しい技術・アイデア・ビジネスモデルなどを社会に提供するために生まれる。規模も小さく、「セクト」あるいは「カルト」にあたる。 そして、その技術・アイデア・ビジネスモデルが革新的であればあるほど、その時代の主流派と対立しがちになる。