<福島第一原発ルポ>新型タンクや高性能ALPS……汚染水対策の現状は
東京電力は10月16日、今年3回目となる福島第一原発の報道公開を実施し、汚染水対策として導入した複数の新設備を初めて公開しました。筆者は今回で3度目の報道公開参加となりますが、今回の公開内容や福島第一原発を取り巻く種々の状況を併せて俯瞰すると、まだまだ極めて困難な状況が続いていることが浮かび上がってきます。
真っ青な巨大タンク
福島第一原発構内に入って真っ先に目に入ってきたのが、真っ青な巨大タンクでした。汚染水保管の新型タンクです。
東日本大震災時の津波で全交流電源が停止した福島第一原発の1~3号機では、冷却不能となった核燃料が溶け落ち、水素爆発などが発生して原子炉が損傷しました。溶け落ちた燃料は今も注水で冷却中ですが、燃料に触れて高濃度の放射性物質を含んだ水は常に漏出し、発電用タービンを格納した建屋の地下に溜まっています。これが「汚染水」です。 東京電力はこれをくみ上げ、透過性が高く人体に最も影響をおよぼしやすいガンマ線を含むセシウムを除去し、さらにβ線を発する核物質を含む廃液を分離して、残った水を再度冷却に使用しています。この過程でβ線核種を含む廃液を最終汚染水としてタンクで保管中です。
タンクは当初、グレーの組立式のものが用いられていましたが、昨年夏に組立継ぎ目から汚染水の漏出が発覚したため、新たに溶接型保管タンクの設置を開始し、組立式と順次置き換える作業を進めています。前述の青色の汚染水保管タンクはこの溶接型のものですが、今回タンクエリアを見渡す限り、まだ圧倒的にグレーの組立式タンクの方が多い状態で、まだまだ置き換えに時間がかかることをうかがわせています。
高性能ALPSとストロンチウム除去装置
防護服・全面マスクに着替え、まず案内されたのは、主に汚染水に残る62種類の核物質を告示濃度限度以下まで取り除ける高性能型の多核種除去設備(ALPS)と汚染水からストロンチウムのみを取り除くモバイル・ストロンチウム除去装置です。ALPSは既に3系統が試運転中ですが、高性能型ALPSは政府の支援を受けて新たに開発されたもので、既存型と比べ1系統の処理能力は2倍、発生する放射性廃棄物量は9割削減できるとのことです。 筆者は過去に箱形装置をいくつも並べて大小数多くの配管でつないだ非常に複雑怪奇な既存型を見たことがありますが、高性能型は明らかに配管などが簡素化され、一見しただけでも進化がうかがえました。一方のモバイル・ストロンチウム除去装置は巨大なコンテナを太いホースでつなげただけのようなものでした。 東京電力・福島第一原発の小野明所長は、報道公開時の記者会見で、新設備や既存のセシウム除去装置の改良でストロンチウムなどを除去できる機能を付加し、「現在保管中の汚染水約36万トンの処理を来年3月末まで完了する」と宣言しました。