<福島第一原発ルポ>新型タンクや高性能ALPS……汚染水対策の現状は
廃炉への道筋は手探り
今回の報道公開で非常に特徴的だったのは、報道公開が始まって以来、事故を起こした原子炉建屋群周辺には全く近づかなかったことです。それでも同原発構内の高台からは1~4号機の様子はうかがえました。筆者が初めて構内に入った2013年3月時と比べ、4号機では使用済み燃料プールからの燃料棒取り出し用建屋カバーが新設され、実際の燃料棒取り出しも順調に進んでいますし、水素爆発により大量の瓦礫が積みあがっていた3号機上部から大きな瓦礫は姿を消しているなど明らかな違いがありました。 ところが、問題はこれからです。3号機では瓦礫除去後に4号機と同じく使用済み燃料プールからの燃料棒取り出しが行われる予定ですが、プールのあるオペレーティングフロアの放射線量はいまも毎時数百ミリシーベルトを超え、人的作業が困難な状況です。1号機では瓦礫除去のため、放射性物質を含んだ粉塵の飛散防止薬剤を散布中で、2号機はほぼ手付かずです。 奇しくも東京電力は10月30日、これまで廃炉に向けた工程表で1号機について使用済み燃料プールからの核燃料取り出しを早ければ平成29年度から、溶け落ちた核燃料の取り出しを平成32年度からとしていた計画を2~5年遅らせることを明らかにしました。 このことと併せて考えると、今回報道公開で建屋群に近づかなかったのは、公開するほどの進展がないことの表れとも言えます。史上まれに見る事故から廃炉までの取り組みは、手さぐりで先が見えないものであることを、私達は改めて認識する必要があるでしょう。 (ジャーナリスト/村上和巳)