南シナ海の領有権争い…中国の“威圧的行動”に日本も異例の対応 フィリピンと協力で国際秩序は守られるのか
中国の「外国人拘束」新規定…中比の暫定合意による影響
その後も衝突が続いていた6月、中国は突如として、「領海」に違法に侵入した外国人を最長で60日間拘束できる規定を施行した。直後にはフィリピンの複数のゴムボートを“襲撃”して乗員らを一時的に拘束する事案も発生し、対立はさらに激しさを増した。 こうした中、フィリピン政府は2024年7月、中国政府と軍事拠点への補給活動に関する暫定的な取り決めに合意したと発表した。その内容は、「両国は緊張を緩和し、相違点を解決する必要性を認識している」というものだった。しかしその後も、アユンギン礁だけでなく、サビナ礁、スカボロー礁といった他の海域でも衝突が続いている。
中国の威圧的行動にASEAN諸国は足並み揃わず
一体なぜ対立は長年にわたり続き、解決に至らないのか。 南シナ海は天然ガスや漁業資源が豊富で、東南アジアの一部の国や中国が島や岩礁などの領有権を主張しあっている。とりわけ中国は、南シナ海のほぼ全域を自国の「領海」だとする地図を公表するなどして、周辺諸国に圧力をかけてきた。 2016年、オランダ・ハーグの仲裁裁判所は、中国が主張する独自の領海には根拠がないという判断を示した。しかし、中国はこの判決を受け入れず、埋め立て地を増設するなど威圧的な行動を取り続けている。 これに対し、フィリピンをはじめ、ベトナム、マレーシアなどASEAN=東南アジア諸国連合の一部の国が反発した。2024年9月末にはベトナムの漁船が中国の船から襲撃される事件も発生し、10月にラオスで開かれたASEAN首脳会議では激しい論戦が繰り広げられた。フィリピンのマルコス大統領は会議の場で国際法の順守を改めて訴え、中国の李強首相の目の前で、「継続して嫌がらせや威嚇を受けている」などと非難した。 また、一部の加盟国からも情勢を懸念する意見が相次いだ。ところが、経済的に中国とつながりが強い国々は賛同せず、逆にASEAN内の温度差を露呈することになった。結局、足並みが揃わないまま首脳会議は閉幕し、後日公表された議長声明は、「状況を更に複雑化させるような行動を回避する必要性を再確認した」といった例年通りの文言を繰り返すにとどまった。