アルファ世代 へのリーチには「常時オン」のメディア戦略が必要に:クレアーズのCMO クリスティン・パトリック氏
2023年、ブランドは新旧の消費者がいる場所で彼らと出会うために、さまざまなチャネルの活用に多大な重点を置いていた。 スキンケアブランドのピースアウト・スキンケア(Peace Out Skincare)の場合は、プラットフォーム内外で消費者を獲得するためにマーケティングの取り組みを多様化させていたようだ。一方、セフォラ(Sephora)では、1月にローンチしたイニシアチブ、セフォラ・サウンズ(Sephora Sounds)で音楽と美容の顕著な関係を活用し、Z世代とのつながりを維持している。また、旅行が本格的に戻ってきたことで、LVMHやソル・デ・ジャネイロ(Sol de Janeiro)といったブランドは、その機会を活かしている。
コンテンツ・プラットフォームと提携して若い世代にリーチ
だが、顧客とのつながりを維持するためにチームが異なるアプローチを展開しているのが、創業62年のアクセサリー小売店クレアーズ(Claire’s)である。11月、クレアーズは若いオーディエンスを焦点とする知的財産イニシアチブを強化するため、コンテンツ・プラットフォームのソニー・ピクチャーズ・テレビジョン・キッズ(Sony Pictures Television ─ Kids)との提携を発表した。そして12月には、そのコンテンツイニシアチブを強化するため、ポッドキャストおよびオーディオエンターテインメント制作スタジオであるオーディオ・アップ(Audio Up)と新たに提携している。このふたつの提携によって、クレアーズはライフスタイルブランドへの転換を目指し、オリジナルのエンターテインメントコンテンツの制作を始めたナイキ(Nike)のようなブランドの足跡をたどっている。 「ブランドとビジネスを完全に解体し、(Z世代とアルファ世代)を理解して、その世代にとって何が重要なのかを把握しようとした」と、クレアーズのCMO、クリスティン・パトリック氏は述べている。「ブランドにはさらに多くを望んでいるという消費者からの意見がある。現在のクレアーズが行っているのとは違う形で、消費者は自分たちの生活にクレアーズを取り入れたいと思っている。アクセサリーに合うようなアパレルや、寮や寝室のデコレーションなどもほしがっている。今、私たちはその両方のビジネスのカテゴリーに参入している」。 「(さらに)消費者は、スタイリングに関するストーリーや情報などのコンテンツをクレアーズに求めていると言っていた。また、同世代のほかの子供たちについて知りたがっていた。そこで、クレアーズのストーリーを伝え、消費者の生活においてつながりを深める方法を見つけることにした」。 クレアーズは2021年に、エンターテインメント部門であるクレアーズ・コンテンツ・スタジオ(Claire’s Content Studio)をローンチした。だが最近の投資が示唆しているのは、ブランドが新たな年を迎えるにあたって、新しいコンテンツフランチャイズや独自の知的財産(IP)、パブリッシングにさらに注力するということだ。 パトリック氏は、こうした最近の取り組みがブランドの収益にどのように貢献したかについては明言を避けた。7月にGlossyが報じたところによると、クレアーズが最後に報告した売上高は2022年1月29日に終了する会計年度のもので、それによると前年比53%増の14億ドル(約1974.3億円)だった。 パトリック氏はGlossyに対し、ブランドがメディア企業になるために必要なこと、オーディオ・アップとの提携に期待することなど、クレアーズのエンターテインメントとIP戦略について詳しく語った。 ーークレアーズのソニーとオーディオ・アップとのコンテンツパートナーシップは、今後どうなるのか? 「(クレアーズは)かなり昔から存続しているため、単なる小売店以上に大きな存在になっている。消費者にとって特別な場所だ。だから私たちが目指しているのは、(若い)世代にとって大切なストーリーを伝えること。それはクレアーズは何者なのかをもう少し掘り下げることから、当社の知的財産の創造(を分解すること)まで、何でもあり得る。Robloxに参入して、シマーヴィル(ShimmerVille)というゲームを制作した。そのゲームの中にいくつものキャラクターがいるので、それらに命を吹き込む方法を探っていきたい。また、ローンチするいくつかのコンテンツに関しては、マネタイズ可能なフランチャイズを構築するために取り組んでいる。 消費者の生活にとってクレアーズがどれほど重要な存在であるかを最初に理解し始めた際に、さまざまなビジネスに参入することができたし、クレアーズとその世代のストーリーを伝えられるようになった。すでに強力なリーチを拡大しており、魅力的なコンテンツだけでなく、商品や独自の体験を通じてオーディエンスと出会っている。ある意味、すべては消費者次第だ。消費者が今いる場所で彼らに出会いたい、それが私たちの進歩の次のステップであり、ブランドとしてやれるチャンスなのだ」。 ーークレアーズが今回の新しいIP分野をナビゲートするなかで、セールスのようになりすぎずにブランドとして信憑性のあるコンテンツを制作するにあたり、どのように取り組んでいるか? 「ブランドとして、またストーリーテラーとして微妙な線を歩むことになる。すべてのブランドは、ブランド精神を理解し、ブランドの観点からストーリーテリングの限界をどこまで広げることが可能なのかを理解する必要がある。そこをしっかり把握していなくてはならない。クレアーズの場合、ストーリーテリングという点ではさまざまな可能性が考えられる。ひとつの方法は、この世代が興味を持っていることに飛び込むこと。そして彼らにとって重要なことについて発言の機会を与えることだ。そのすばらしい例に、消費者にマイクを向けた『親愛なるクレア(Dear Claire)』という5部構成のエピソードシリーズがある。そこでは自社プラットフォームを活用し、子供たちを集めて自分たちの生活について語ってもらった。何を話すべきかは指示しなかった。子供たちが集まり、幸せを見つけることから社交的であること、身体醜形障害(の克服)やバランスを見つけることなど、ありとあらゆることについて話してくれた。これは目からウロコが落ちるような体験だった。この世代にマイクを渡し、会話を主導させてストーリーを語らせることで、クレアーズはこの世代の子供たちの信頼を得ることができる」 。 ーーブランドがメディア企業になるには何が必要なのか、また、どのブランドがメディア企業になるべきなのか。 「必ずしもメディア企業になることが重要なのではない。大切なのはブランドが消費者とのコミュニケーションについて考える方法だ。マーケティングの面では、6つか7つのソーシャルプラットフォームを継続的に利用する必要があり、常時オンの声を作っていきたい。では、それはどのようなものか? 企業が考えるべきことのひとつは、製品のサプライチェーンと同じように、コンテンツのサプライチェーンを持つこと。好むと好まざるとにかかわらず、ブランドはコンテンツのパブリッシャーにならなければならない立場に置かれていて、すべてのブランドが、クレアーズやペプシ(Pepsi)がやっていること、あるいはナイキがワッフル・アイアン・エンターテインメント(Waffle Iron Entertainment)と一緒に行っていることをできるわけではない。自分たちが何のために存在しているのか、非常に明確なビジョンを持つ特別なブランドは、そこに到達ことができる。そして消費者もまた、ブランドがそこに進むことを許容しなくてはならない」。 [原文:Claire’s CMO Kristin Patrick: Reaching Gen Alpha will require an ‘always-on’ media strategy] TATIANA PILE(翻訳:Maya Kishida 編集:山岸祐加子)
編集部