「中国戦で感じたのは"停滞感"」11月のW杯アジア最終予選を2連勝で飾った日本代表に福西崇史が見た課題
■ボランチ守田英正不在の影響 ――ボランチで守田英正選手から田中碧選手に先発を変えてきました。ここの影響はどのように感じました? 福西 守田が不在で「誰がゲームをコントロールするの?」となったときに、誰もいなかったですよね。後ろで回すことはもちろんですけど、前とどうつなげていくか。相手がコンパクトに守ってスペースがないのならボランチのところで相手を引きつけてシャドーのところにスペースを作るとか、そういうことがなかなかできなかったですよね。 サイドにボールを運んでシャドーに良いタイミングで入れば攻撃はできるけど、サイドは選択肢が狭くなってしまうし、合わなければ先ほど言ったように下げるだけを繰り返してしまいます。前半はボランチから縦に入れるパスというのがあまり作れなかったですよね。 ――後半に鎌田大地選手が出てきて、流れが良くなりました。 福西 鎌田が良いタイミングでシャドーの位置から下りてきてボールを預けられたので相手も出てくるしかなくて、この前後の揺さぶりでスペースが生まれましたよね。クサビのパスのもらい方、サイドに流れたときのサイドの選手の引き出し方、味方をフリーにさせるこの引き出し方は鎌田が一番上手いなと思います。 相手が疲れて出足が遅くなったこともありますが、鎌田が入ったことで全体がスムーズに流れるようになりましたね。 ■課題の見えた3バックの守備 ――守備陣に関してはどんな印象でした? 福西 インドネシア戦も含めて谷口彰悟が怪我で不在となって、板倉滉が3バックの真ん中をやりましたが、やっぱりまだやり慣れていないという印象でしたね。 チーム全体でのプレスが機能しているときは問題ないですが、中国戦での失点シーンのようにプレスが剥がされたときに不安を感じました。失点シーンでは久保建英がプレスバックをさぼってしまったところもありますが、ラインが下がったり、中の絞りが遅れたりなど、対応が後手に回るところは修正が必要だと思います。 ――そこは攻撃的な選手を多く採用しているリスクという部分にもなるんでしょうか。 福西 もちろん、そういうこともあるし、遠藤航のところで止めるべきという見方もあると思います。ただ、そこを突破されることはあるわけで、そうなったときにラインが下がっているので、そこへ侵入されて後手に回って最終的に後ろでスペースを作られてしまうことになりますよね。誰を起用していてもそこのリスク管理はしなければいけないですよね。 ――他にも守備の課題は感じましたか? 福西 センターバックがロングボールをかぶったときの対処ですね。板倉はどうしてもラインが下がってしまい、次の対処でカバーして潰し切れないことでピンチにつながっていました。板倉は中央に入ると、積極的に前へ出て潰しに行くという彼自身の強みもなかなか出せなくなっているので、ここはもっと精度を高めていかないと一発でやられる可能性は高くなってしまうかなと思います。 ――今節でサウジアラビアがインドネシアに敗れたことで、日本は次節、来年3月のホームのバーレーン戦に勝利すればW杯出場が決まります。 福西 これだけ余裕のあるW杯予選は過去になかったですよね。それだけ日本がアジアでは頭一つ、二つ抜けたレベルになったという証明だと思います。もちろん、これで気を抜くということではないですが、先のことを見据えながら色んな選手、組み合わせを試して、より選手層の厚いチームになっていければいいと思います。 構成/篠 幸彦 撮影/鈴木大喜