安藤政信 事務所退社後3年間のフリー活動を経た胸中
映画『GONIN サーガ』に出演する、俳優の安藤政信。今年5月に40歳を迎え、来年は初主演映画で代表作となっている『Kids Return キッズ・リターン』から数えて、俳優生活20周年目に突入する。同作で各映画賞を総なめにした後、深作欣二監督、三池崇史監督、塚本晋也監督ら才能豊かな映画人の現場でキャリアを築いてきた。ところが2009年の中国映画『花の生涯~梅蘭芳~』出演を機に、しばらくの間、日本映画界から距離を置き、さらに今年5月まで事務所に所属しないフリー俳優として活動していた。その胸中とは。
俳優業を支える裏方の仕事に触れ苦労知る
チェン・カイコー監督による『花の生涯~梅蘭芳~』で、日本から飛び出した。「ちょうど日本映画に飽きている時期で、同じようなルーティンワークに嫌気がさしていたんです。変に道が出来てしまうような感覚が嫌だった。アジア圏の映画も好きで、憧れの監督もいましたから、その監督に会いたいという一心で自分から飛び込んだ感じです」と、新天地で心機一転を図ったという。 海外作品に参加したことで、逆に日本映画を支えるスタッフたちの優秀さに気づく。2011年の映画『スマグラー お前の未来を運べ』で約4年ぶりに日本映画に復帰。しかし再び新たな刺激を求めて所属事務所を退社。フリー俳優として、約3年間活動することになる。 「なんだか急に飽きが来てしまって、そこから“一人でやってみよう”と思ったんですよね。ギャラ交渉も自分でやったし、請求書も自分で出しました。自分の事を一から相手に説明して出演交渉もしたりして。すべてが自分の身に降りかかってくるので、かなり大変でしたけど」。俳優業を支える裏方の仕事に初めて触れて、その苦労についても身をもって知った。
竹中直人さんが石井監督と僕をつないでくれた
安藤自身「役者一人で芸能界という“村”でやっていくのには無理がある」と覚悟はしていたが、俳優としての魅力は衰えることなく、オファーは舞い込み続けた。石井隆監督が『GONIN』の19年ぶりの続編として作り上げた『GONIN サーガ』もその一つ。「自分はブログもホームページもやっていなくて、誰もどう僕に連絡していいのかわからない中、竹中直人さんが石井監督と僕をつないでくれた。フリーの自分にオファーが来るのは本当に嬉しかった」と、仕事ができるありがたみを噛みしめる時間でもあった。 しかも『GONIN』は安藤にとって、ベストフィルムと呼べる作品。劇場公開時には3回観て、サウンドトラックCDとVHSも持っているほど。その続編に指名されれば、二つ返事しかない。また前作の出演者であり、石井監督のラブコールに応えて約11年ぶりに銀幕復帰を果たした根津甚八との共演も大きな刺激となり、安藤の仕事観はガラリと変わった。