専門家に聞く「2024年問題」の基礎知識
「報道部畑中デスクの独り言」(第359回) ニッポン放送報道部畑中デスクのニュースコラム。今回は、「2024年問題」について― 【写真全4枚】NX総合研究所リサーチフェロー・田阪幹雄さん
今回の小欄は「2024年問題」について取り上げます。改めておさらいをしますと、2024年問題は働き方改革関連法で、ドライバーの労働時間に上限が課されることによって生じる問題のこと。 働き方改革そのものは、さまざまな企業で既に実践されていますが、物流・運送業界ではこれまで規定が免除されてきました。いよいよ、今年(2024年)4月から適用ということになります。専門家の分析、各企業の対応も交えながら、2024年問題、私たちが押さえておくべきポイントをお伝えしていきます。 「要するに時間をかけてはいけない、ドライバーの拘束時間、労働時間が規定をオーバーしてはいけませんよというのが2024年問題の最も大きなところ。予想されることは運賃や料金が上がる」 こう話すのは、NX総合研究所リサーチフェローの田阪幹雄さん。NXとはNIPPON EXPRESS=日本通運のこと。田阪さんは日本通運で海外勤務も経験されているという、まさに物流のプロ、専門家です。 トラックドライバーの拘束時間は、これまでは年間3516時間以内となっていますが、今年4月からは3300時間以内と、216時間減少します。これによって貨物全体の14%あまりが運べなくなると言われています。ドライバーの人手不足、物流の停滞、さらには業界の売り上げ・利益減少、ドライバーの収入減少が懸念されています。 この2024年問題、消費者の視点で懸念されているのは宅配便への影響です。荷物がちゃんと届くのか、料金が上がるのではないか……確かにこれも重要ですが、NX総合研究所の田阪さんは「宅配便が日本の総貨物量に占める割合は極めて限られている。宅配便は2024年問題のメインイベントではない」と話します。 2020年の時点のデータでは、運送ドライバーは全国で約72万人いると言われています。そのなかで、宅配便のドライバーはおよそ20万人、27%あまりです。一方で貨物全体の量に占める宅配便の割合は1%ほど。いわゆる「小口運送」にドライバーの業務が集中しているという傾向がうかがえます。こういったことから宅配便の影響はもちろん無視はできませんが、貨物量で見れば、BtoB=企業と企業の間の輸送の影響がより大きいというわけです。