専門家に聞く「2024年問題」の基礎知識
一方で、NX総合研究所の田阪幹雄さんは、もう一段、中長期的な観点での対策を指摘します。 「日本の物流の特性を認識しなければいけない。ドライバーが荷主の施設のなかで荷役作業を行うことは、欧米ではまずない。いわゆるBtoBの貸し切り輸送をトレーラー化していない国は世界で少数派になっている。ドライバーを貨物から離すという意味で、トレーラー化が今後、必要になっていくかも知れない」 トレーラーはご存知の通り、運転席と荷物を分離できる車両です。受け側の荷主に荷物が到着したときに、荷物の部分を分離すれば、ドライバーは荷役作業から解放されるというわけです。ただ、日本はトレーラー中心の輸送体制が整っているとは言えません。街中は狭い道が多く、トレーラーが通るのは現実的ではないようですが……。 田阪さんはイギリスの例を挙げながら、都市計画の重要性を訴えます。 「イギリスに行くと、住宅地のなかに工場はないし、住宅地のなかに物流施設もない。20世紀に入って100年の計でもって国を挙げて都市計画をやってきた。住宅と工場物流施設を完全に棲み分けさせた」 「それに対して日本は、市街化区域が13の用途地域に分かれている。それぞれの用途地域でどういうものを建てられるか決められているが、面積で見ると半分以上が住宅と工場、物流施設が共存できるとなっている。ここを整理していく必要がある」 「いまの日本の物流は世界のなかのグローバルスタンダードではないことに気づき、中長期的に考えながら手を打っていくことが必要だ」 2024年問題をさまざまな角度からお伝えしましたが、運搬作業の見直しはもちろんのこと、配送回数、配送拠点の効率化、異業種との連携、そして、トレーラー輸送、都市計画の見直し……そう考えると、「2024年問題」は決して2024年で終わるものではありません。それは日本の物流を変える、ことによると社会の変革にもつながる、その第一歩であると、結論付けられると思います。(了)