専門家に聞く「2024年問題」の基礎知識
さらに、そのなかで最も影響が出る業種は「農業・水産業」です。2024年問題で30%以上が運べなくなると言われています。結果として野菜や魚の価格が上がる可能性もあります。さらに、農林水産物は飲料・食料品の原材料でもあるため、メーカーの工場に原材料が届かず、個々の生産が上がらなくなることも考えられます。まさに「上流」の影響が、宅配便も含め「下流」である消費者にまで及び、経済全体に影響を与えていくというわけです。 こうしたさまざまな課題への対策として、何が必要でしょうか。 「短期的な対策は、ドライバーをできるだけ荷主の現場で長時間拘束しないことが大事。基本的に運賃を払うだけでは、これからトラック運送事業者が受けないという時代に入っていくと思う。省人化、自動化、無人化の方向に進む可能性がかなり高い」(田阪さん) 運送業界では手待ち時間、荷役作業という概念があります。手待ち時間というのは、労働時間内で所定の労働に従事することなく待機している時間……例えば、荷物が到着したあと、積み込みを待っている時間がこれにあたります。そして荷役作業は、荷物を積み下ろす際に荷物を手で運ぶなどの作業を指します。 特に荷役作業は多くのケースでドライバーが無償で負担していましたが、本来は費用が発生するもの。これからは、ただというわけにはいかなくなります。そこで、手待ち時間と荷役作業をできるだけなくしていこうという動きが出てきます。いわば作業の効率化です。 新年早々に開かれた経済3団体主催の新年会。出席した企業のトップも2024年問題の対策について言及していました。 「1日3便から2便に減らす、他社との共同物流の検討、冷凍物流を増やす、この3本柱で対応」(ローソン・竹増貞信社長) 「物流システムの活用、業界を超えた共同輸送、関西以西の商品輸送の柔軟化」(サントリー食品インターナショナル・小野真紀子社長) 「物流データの共有、積み荷の会社をまたいだ連携、長距離トラックの中継拠点によるドライバーの負荷軽減、商用事業の長期的な視点では、自動運転の技術を提供していく」(トヨタ自動車・佐藤恒治社長)