マジョルカ久保建英が6分間語った森保Jでの決意と自信「選ばれている理由をピッチで見せる」
6月29日の横浜F・マリノス戦後に開催された退団セレモニーでのス ピーチを除けば、レアル・マドリードへの移籍が決まった6月14日以降で、久保は公の場でほとんど肉声を残していない。バレンシア戦後もクラブ側の判断で取材エリアを通過せず、日本へ帰国する機上の人となった。 鹿嶋市内での初練習を終えた後も、スペインでの日々に関しては「また別の機会でお話できれば。遠いと思いますけど、(スペインへ)来ていただければ答えますので」と、笑いながらやんわりと煙に巻いた。それでも6分あまりにわたった取材対応のなかで、コパ・アメリカ以降で培ってきた経験が反映されているかのような、強い思いが込められた言葉が紡がれている。 「(移籍後は)いろいろありましたけど、いまこうして鹿嶋で代表の一員として戦っている、ということがすべてだと思っているので」 サッカー人生で貫いてきた独自のイズムを、スペインだけでなく森保ジャパンでも貫いている。次の瞬間に何が起こるかわからない宿命と背中合わせのスポーツだからこそ、刹那を生きていきたいと久保は決意を語ったことがある。 「身体的にもそういうこと(不慮のアクシデントや大けが)があるかもしれないので、サッカーができる喜びをかみしめながら一日一日を、目の前の試合を大切にできれば」
ゆえにシーズンや戦いを前にして、具体的な数字目標を挙げることにも「自分としてはあまり好きじゃない」と苦笑したこともある。FC東京時代からぶれることのなかった思いを、パラグアイ代表を県立カシマサッカースタジアムに迎える5日のキリンチャレンジカップ、そして敵地ヤンゴンへ乗り込む10日のカタールワールドカップ・アジア2次予選の初戦へぶつける。 「(ワールドカップ予選は)はっきり言って重みも、背負っているものも全然違う。プレッシャー、プレッシャーと言われると逆にプレッシャーを感じるかもしれないので、あまりそういう言葉を耳にしないようにしています。ただ、(予選の)初戦は難しいとよく言われがちなので、しっかりと勝つことは大事だと思います。かといってあまり大きなことは言わずに、次いつ選ばれるかわからないので、毎試合、毎試合を大切に戦っていきたい」 帰国当日とあって、久保は3日夕方から始まった練習を軽めのメニューで終えた。冒頭の15分間が公開されたピッチでは、ともにコパ・アメリカを戦ったMF中島翔哉(FCポルト)、DF植田直通(セルクル・ブルージュ)らと談笑しながらランニングしていた。 バレンシア戦ではなかなかパスが回って来なかった。スペイン人のビセンテ・モレーノ監督が掲げる戦術への理解度、新しいチームメイトたちとの連携もまだまだ不十分だが、それでも「試合に出るために行っているので」と、ラ・リーガ1部のピッチに立ったことが収穫だと努めて前を向いた。 「それをここでどうこう言っても何も起きないですし、ここ(代表)で自分がいいプレーを見せることが、少しでもプラスになればいいかなと思っています」 合流したばかりのマジョルカを10日以上も留守にする状況への不安よりも、代表で得るであろう自信や勢いをマジョルカへ還元したいと力を込めた。代表メンバー発表の席上で「彼自身がもっともっと成長していくために、ギラギラしたものを見せてほしい」と言及した森保監督の期待にも、当意即妙のコメント力で新たな戦いへの決意表明に変えてみせた。 「自分が選ばれている理由というものを、ピッチの上で見せていかなければいけないと思っています」 待望の初ゴールを決めた瞬間に金田喜稔がもつ19歳119日の国際Aマッチ史上最年少ゴールを、ミャンマー戦でピッチに立てば風間八宏がもつ19歳67日のワールドカップ予選の最年少出場記録を塗り替える9月シリーズ。そのいずれも「もやもやした表現で申し訳ありませんけど、すごい選手になりたい」とごく近い将来の自分自身を思い描く久保にとっては通過点でしかない。 (文責・藤江直人/スポーツライター)