スイスの元プライベートバンカー「投資信託買うくらいなら米ドル債券を買いなさい」2024年、16年ぶりの高利回りに世界が沸いた
手数料がかかるのは「購入時」だけではない
個別の米ドル債券と米ドル債券に投資する投資信託の費用はよく比較されるので、見比べてみてください。 ※実際の費用は証券会社やIFA、商品によって異なりますのでご注意ください。(著者作成) 投資信託は2つあり、インデックスファンドは債券の指数に連動する投資信託のことで、アクティブファンドはその債券指数を上回る利益を出すことを目指す投資信託のことを指しています。 費用は2種類あり、購入時の販売手数料と毎年の管理費用である信託報酬です。その2つの費用を運用期間10年として、購入時手数料を年間ベースにならした年間平均費用で、費用感を比較しています。 費用は証券会社やIFA、商品によって異なりますが、私の経験にもとづいた平均的な数字を使っていきます。年間平均費用を見ると、アクティブファンドのコストの高さが特に目立つと思います。年間信託報酬の高さがその原因です。 個別の米ドル債券とインデックスファンドはほとんど差がありませんが、インデックスファンドのほうがやや費用が低くなることが多いと思います。個別の米ドル債券の場合は購入時にかかる費用はそれなりに高いですが、毎年の管理費用などがかからないので、残存期間が長いほど年間あたりの費用は低くなります。 インデックスファンドとほとんど変わらない費用で信頼できるアドバイザーからしっかり提案を受けられ、いつでも相談できるのであれば個別の米ドル債券の費用は高くないと思います。
2024年は16年ぶりの高利回り
アメリカが発行している米国債の利回りはすべての米ドル債券の利回りの基準となっています。つまり、米国債の利回りが上がればすべての米ドル債券の利回りも上がり、米国債の利回りが下がればすべての米ドル債券の利回りも下がるので、米ドル債券全体の収益性(利回り)を考える上でもっとも重要な指標です。 図はその米国債の中でもっとも代表的な米10年国債利回りの30年間の推移です。30年の長い動きを見るとわかるように200年から上昇傾向にありますが、長いトレンドで見ると全体的には低下傾向にあります。 全体的に低下傾向にある理由はアメリカ経済が成熟して、成長が緩やかになっているからです。国債の利回りは国の経済成長や物価上昇に連動しています。例えば、インドやブラジルのような新興国だと成長や物価上昇が大きいため、国債の利回りも7%や10%と高くなっているわけです。 一方で、日本のように経済が成長していない国は利回りが低くなります。日本の10年国債利回りは、2024年4月時点で0.7%程度です。アメリカも日本よりは成長していますが、過去と比べるとその成長が緩やかなため、米10年国債利回りも低下傾向になるわけです。 では、アメリカの経済力からどれくらいが利回りの相場なのかと考えると、おそらく2%から3%程度が妥当な水準ではないかと思います。そうすると2024年4月時点の利回りは4.3%なので非常に高水準の利回りと考えられます。 図の利回り推移を見るとわかるように、実は2024年4月は16年ぶりの高利回りなのです。理由は2022年以降のコロナ明けのリベンジ消費とロシアのウクライナ侵攻による原油高・資源高が重なったことによる激しい物価上昇(インフレ)です。 物価が上がると国民の生活が厳しくなるので、アメリカは国が決められる金利を2022年以降上げ続け、それが原因で米10年国債利回りもここまで上昇したわけです。 なにはともあれ米国債で利回り4%以上は滅多にないチャンスということが富裕層の多くが今、米ドル債券に投資している理由かと思います。今の米国債利回り4%まではいかなくても、3%以上あればアメリカの経済力を考えると十分、高水準の利回りで投資のチャンスといえるでしょう。
世古口俊介