「泥沼化する《数十億円の借地権》をめぐる争い」土地の所有者はアルコール依存症に...不動産ブローカーたちの《謀略》が「新橋の白骨死体事件」へと繋がっていく
落ちぶれていく地主の娘
マッカーサー道路に面したこの一角に関しては、多くの不動産業者が周囲のビルの所有者への説得に走り回ってきた。実際、ウエスト社のように開発地域で上物の建物だけを買い取ったケースもあれば、底地を買い取る約束を取り付けてその権利を他に売ろうとしていたところもある。 そうして一帯の土地が地上げされていった。そのなかで彼女の所有地だけが、膠着状態に陥っていたのである。初村がつぶやいた。 「地上げ業者にとってはもう一歩のところ。だけど、彼女の放蕩ぶりはエスカレートするばかりでした。ホテル暮らしの手持ち資金が尽きてしまったのか、ワンカップ酒を買って路上で飲んでいたり、近所の知り合いに金を借りようとしたり……。銀行窓口に居座って110番されたことまであったといいます」 かつての素封家の娘は、ホームレスのようになっていく。しまいにアルコール依存症のような状態になり、16年の3月12日には、愛宕署に保護される始末だった。さすがに警察に保護された彼女は、いったん家に戻ったようだ。だが、それから間もなく、地元新橋の住人も姿を見かけなくなる。心配した隣人が愛宕署に捜索願を出した。実は地主不在のその裏で、事態が動いていたのである。 『「偽パスポートで住民票を移転」...《新橋の白骨死体事件》で暗躍した地面師たちの《周到すぎる》手口』へ続く
森 功(ジャーナリスト)
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