看護師時代に「白いタトゥーを入れた」29歳女性。今は「自分の身体に“楽園”を作っている」
男性と交際していたときに、強い違和感が
かなめさんが自らのセクシャリティについて認識したのは学生時代だったという。 「小さいときから、男の子と女の子のどちらも好きになれる感覚はありました。ただ、大学時代に男性と交際していたときに、強い違和感があったんです。そのころから、『自分は女性が好きなんだ』と気づいたんです」 そこからレズビアンバー『楽園』に惹かれていくのも、自然の流れだった。 「幼い頃から芸能の世界に憧れていたこともあり、その夢に向かって今も踊り続けている女性たちが綺羅びやかに思えましたし、客として足を運んだ自分に声をかけてくれたオーナーのヒノヒロコさんにはとても感謝しています。看護師の仕事もやりがいはありましたが、今は、目の前のお客さんにどんな楽しい時間を提供できるかを考えるのがとても嬉しいんです」
自分の身体に“楽園”を作っている
かなめさんには今後、描く夢がある。 「これまではいろいろな社会的制約を予測して躊躇したり、自分の感情に必ずしも正直には生きられなかったことも多々ありました。もちろんそれで得たものもたくさんあります。ただ、やはり私は老いてもずっと踊りたい。 今、自分の身体に“楽園”を作っているんです。もとからあった女王蜂の刺青の近くに、ユリの花を彫り、胸から鎖骨にかけては天使の羽根を彫りました。もとは目立たないようにと彫った刺青だったけど、お酒を飲むと肌が赤くなる体質と相まって、少し淫靡な感じに浮き出るのが、ここ最近のちょっとした自慢です」 自分の欲求に正直に生きるには、社会の視線が気になる。その隠れ蓑として選んだ、ホワイトタトゥー。だがかなめさんに、隠れる理由などもうない。切磋琢磨しながらともに踊るキャスト、酔いしれてくれるゲストという尊い存在を手に入れたから。かなめさんが身体に刻んだ“楽園”。それはすでに、彼女の目の前に広がっている。 <取材・文/黒島暁生> 【黒島暁生】 ライター、エッセイスト。可視化されにくいマイノリティに寄り添い、活字化することをライフワークとする。『潮』『サンデー毎日』『週刊金曜日』などでも執筆中。Twitter:@kuroshimaaki
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