看護師時代に「白いタトゥーを入れた」29歳女性。今は「自分の身体に“楽園”を作っている」
「タトゥーだけはやめてね」と釘を刺されていた
看護師からレズビアンバーへの転職は、大げさに言えばそうした両親への反旗でもある。 「実は未だに、レズビアンバーで働いていることは言っていないんです。両親は私のことをバー店員だと思っているはずです。そればかりか、少ししたら看護師へ復職すると思っている節もあります。今のところその予定はないのですが(笑)。両親はどちらかといえば考え方が固いと思います。高校生のころ、ピアスを開けたときも一悶着ありました。成人してから舌にピアスを開けたときも、『タトゥーだけはやめてね』と釘を刺されています。ただ、既に胸に大きめの女王蜂の刺青が入っていました(笑)」 思う通りの姿で生きたい。さりとて社会的なつながりを考えれば、振り切ることもできない。ホワイトタトゥーはかなめさんにとってそんなバランスを保つための手段でもあったのかもしれない。 「どこでホワイトタトゥーを知ったのか、今では思い出せないのですが、昔から刺青に興味はありました。特に洋画が好きだったので、タトゥーをした女性が登場する映画などは好きでしたね。社会で生きていくうえで枷になることはわかっていたので、目立ちにくいホワイトタトゥーを入れたというのもあります。最初のホワイトタトゥーを入れた当時は、まだ看護師でした。Vネックのスクラブを着て仕事をしていたので、よく目を凝らせば女王蜂の頭が見えるんですが、同僚には気づかれませんでしたね(笑)。数名、患者さんで気づく人もいましたが、患者さんのなかにはご自身も刺青がある方もいらっしゃって、あまり顔をしかめられた経験はないですね」
「仲が悪い」と思っていた両親だが…
かなめさんの家族観はやや不思議だ。 「物心ついたときから、両親が穏やかに会話しているシーンって思いつかないんですよね。何回か怒鳴り合いをしていたのは思い出せるのですが。2人の間に会話という会話はなくて。両親に面倒を見てもらって育ったというよりは、姉や兄に世話になって大きくなった感じです。だから、上のきょうだいが独立して、私が大学で他県へ行ったタイミングで、離婚するものと思っていたんです。 ところが両親は今も同じ場所でともに暮らしている。母がご飯を作ったら、2階にいる父にワンギリして知らせるんだそうです(笑)。そういえば帰省しても、私に『お父さんにご飯できたよって伝えてきて』とか言われて。伝書鳩ですよ(笑) 私はずっと両親が仲が悪いと思っていましたが、もう少し深い、2人にしかわからないような感情があるんでしょうね」