生成AIブームから考える「人間らしさ」とは【SENSORS】
■AIは身体を持てるか。世界に参加するために必要なこと
一方で、東京大学生産技術研究所特任教授の三宅陽一郎さんは、人間性とは“身体を持って世界に参加すること”であり、今のAIが持つのは表面的な人間性でしかないと語る。
「AIは人間に大きな影響を及ぼしますが、コンピューターの中だけにいて、実はこの世界に参加できていないんです。どんどん人間らしくなっているのに、大して人間のそばにいなくて、可哀想に思えるときがあります。AIに身体や感覚を持たせるには、すごく長い研究と開発時間が必要です。それができるようになると、ようやくAIもこの世界に参加できるようになります」
■生成AIが生み出す、ウソと真実のはざま
AIの進化に伴い、時折フェイクニュースを作って世間を騒がせるという問題も起こる。これもまた、人間らしさに近づいてきた証しであり代償ともいえると三宅さんは語る。 「今でも人間が文字を書きさえすれば、ウソをつけるわけです。ウラを取れば事実ではないとわかるものですが、発信するのがAIになっただけなんです。フィクショナルなものを人間だけが作るんじゃなくて、AIもフィクショナルなものに言及できるようになってきたっていうことですね。だから、ウソの絵も描くし、ウソの動画も作る。AIは人間の延長ですから」
沙羅さんは「現実・リアルとは何か?」と問いかける。 「人間が思う事実ってすごく曖昧ですよね。私たちは世界のことを脳にインプットして、脳の中で現実を作っているので、immaちゃんなどのバーチャルヒューマンだって、もちろんリアルではないんですが、フェイクとまでも言えない気がするんです。CGで作られた映画を見て泣けるのは、目の前で展開されているものが事実のように見えて感情移入ができるからですよね。それが人間の美しいところだと思います。宗教や好きなキャラクターもそうで、自分自身が信じるものこそが現実じゃないかと思います」