国民民主党「103万円の壁」引き上げを阻むのは誰か…税制の議論が自民税調という密室で行われることの”大問題”
密室で決まる税制に目を向けさせた
国民民主党がキャスティングボートを握ったことで、自民党など与党との政策協議が動き出した。少数政党である国民民主党が主張した103万円の壁の178万円への引き上げを、与党が受け入れることになれば、20歳代、30歳代の投票行動によって、政策が実現したということになる。 103万円の壁だけでなく、国民民主党が主張するガソリン税への上乗せ分を撤廃するトリガー条項の発動など、税制は国民生活に密着した問題だ。国民民主党の税制に対する主張が「絵空事」とは捉えられなかったのは、代表の玉木雄一郎氏や国会対策委員長の古川元久氏が財務官僚から国会議員になった経歴を持ち、他の野党議員に比べて税制に詳しいと見られたこともあるかもしれない。 もうひとつの問題は、こうした税制の議論が「密室」で行われていることだ。年末に向けて、与党の税制調査会で議論が進められるが、核心部分は「インナー」と呼ばれる大物議員で決定される。後ろに財務省がいるのは公然の秘密だ。 国民民主党がキャスティングボートを握り、せっかく税制に有権者の目が向いてきたこのタイミングで、税制議論をもっとオープンに行う道筋ができることを期待したい。与野党間の政策協議で税制が議論され、国民に説明されることで、国民の税制や国の財政に対する理解も深まるに違いない。
磯山 友幸(経済ジャーナリスト・千葉商科大学教授)