仲村トオルが挑戦し続ける理由 「“わからないけど、とりあえずやってみよう”を大切に」
「どの現場でも刺激は受けるもの」
――本作では毎回、料理店「一香軒」を舞台にオヤジとお客さんによる一対一の会話が繰り広げられます。各話のゲストには若手からベテランまで、老若男女問わず個性的な役者さんが集結していますが、みなさんとの二人芝居はいかがでしたか? 仲村:これまであまり二人芝居という観点では捉えていませんでしたが、言われてみればたしかにそうですね。僕は過去に一度だけ、佐々木蔵之介くんと舞台で二人芝居をやったことがあって、そのときも、二人だけだと会話のキャッチボールにおけるリズムが意外と作りやすいと感じたんです。その人だけにパスを投げていればいいというのもありますが、今回もゲストの皆さんが優秀なキャッチボール相手だったこともあり、気持ち的にすごく楽をさせてもらったように思います。 ――現場ではゲストの皆さんそれぞれと話し合いながらお芝居を作っていかれたのでしょうか? 仲村:いや、撮影の合間にゲストの皆さんとしていたのは芝居に関係のない雑談ばかりだった記憶です。今回は監督が丁寧にプランを考えてくださったので、僕たちはひたすらそれをこなしていった感じですね。 ――今回はスタッフ陣にも近藤啓介監督をはじめ、若いクリエイターの方々が名を連ねていますが、仲村さんとしても刺激を受けた部分はありますか? 仲村:原作の足立さんも、監督の近藤さんも、僕とは20歳以上年が離れているので、当然ジェネレーションギャップみたいなものはあります。それこそ近藤監督の撮影スタイルは、僕が20代の頃にご一緒していたフィルムで撮る監督たちのスタイルとは全く異なるので、そこに合わせていくのは難しくも面白く感じました。あと、これは監督の年齢に限らずですが、たとえ与えられた演出が率直に面白いと感じるものではない場合もとりあえずやってみるのが大事だなと思っています。「それってどういう意味なの?」って質問するよりも、まずはやってみる。それでやってみた結果、わかる場合もあれば、自分にはわからなかったけど、こういうのを面白いと思う感性があるんだなと知る場合もあります。いずれにせよ、どの現場でも刺激は受けるものです。 ――その「とりあえず乗っかってみる」という柔軟なスタンスが素晴らしいなと思いました。 仲村:それはもう経験の結果ですね。逆に自分が面白いと思ってやったことが、そうでもなかったなという経験もしてきた結果、自分はわからないけど、とりあえずやってみようという姿勢になったんじゃないかなと思います。 ――本作は全12話ですが、毎日でも観ていたくなる作品だなと思います。もしこのドラマがシリーズ化したら、仲村さんはまたオヤジを演じてみたいと思いますか? 仲村:それはもちろん。原作にもまだ映像化されていない面白いエピソードがたくさんあるので、多くの方にドラマを観ていただき、できればシリーズ化できるくらいの結果が出るといいなと思います。
苫とり子