「どうせ家で話せるわけない」知的障害者を10年虐待、副理事長による「無法地帯」 内部通報があったのに市役所は7年間認めず
清陽会の千田理事長は金成さんに謝罪はしたものの、報告書の詳細を伏せて「身体的虐待はなかった」と虚偽の説明をしていたことになる。今年3月になって「事実認識が欠けており、不適切な発言だったことを強く反省している」と釈明したが、この時点でもやはり報告書の開示は拒否。金成さんからの再三の要請や府中市からの指導を受け、4月にようやく開示した。金成さんは元副理事長による虐待の数々と、理事長の説明が虚偽であることをようやく確認できたが、報告書がまとめられてから1年以上がたっていた。 清陽会は今も報告書は公表しておらず、職員にも概要しか明らかにしていない。 元副理事長を刑事告発するよう求めた金成さんに対しては、こう回答した。「傷 害罪に該当する行為があったことを裏付ける資料を有しておらず、告発は難しい」 ▽被害者はPTSDと診断「息子の人生はめちゃくちゃ」 府中市の対応はなぜここまで遅れたのか。法人への遠慮や事なかれ主義が背景にあったとみられるが、担当課長らはこう釈明した。
「指導はしていたが、元副理事長になかなか会えなかった」 「もっと早い対応が必要だったと思う。利用者には申し訳ない」 これまでは通常の指導・監査だったが、今年1月からは社会福祉法に基づく特別監査に切り替え、7月14日に監査結果を発表。不正・不適切な支出が多数見つかったとして、再発防止策など改善を勧告した。東京都も7月7日、立ち入り検査に入った。千田理事長は「既に改善に取り組んでおり、市の指導に沿って対応したい」としている。 元副理事長から虐待を受けた金成さんの長男は、心的外傷後ストレス障害(PTSD)と診断された。今もフラッシュバックを起こして、物を壊したり他人を殴ったりしてしまう行動障害が出ることがある。そのため、外出時などはヘルパーが2人付き添う。 「虐待で息子の人生はめちゃくちゃにされた」と金成さん。「清陽会は関係者を処分するなど責任を取ってもらいたい。行政は、きちんと指導監督しないと、こういうひどい結果を招くということを肝に銘じてほしい」