「どうせ家で話せるわけない」知的障害者を10年虐待、副理事長による「無法地帯」 内部通報があったのに市役所は7年間認めず
▽恐怖で職員を支配した元副理事長、行政は何をしていた? 報告書は、法人の状況を次のように説明している。「元副理事長への恐怖感で職員は反論できない環境だった」「理事や評議員の多くが元副理事長の依頼で就任しており、実質的な審議がなされていなかった」 不正常な運営の直接的な原因は「元副理事長の強権的な支配」としつつ、こうも指摘している。「理事会や評議員会が十分機能していなかったことも、人権侵害が長年にわたり行われたことの大きな要因だ」 一方、利用者の家族や職員の中には、行政に虐待を通報した人もいた。報告書によると、府中市に最初の通報があったのは2013年。だが、市が元副理事長による虐待を認定したのは2020年7月で、約7年を要した。職員や家族からは、行政の不作為を訴える証言もあった。 「市や労働基準局に通報したが、注意程度で終わってしまい、訴えた人は精神的にまいってしまい退職した」
「同僚が市に相談に行ったが、市から確認はなかった」 「知人が心配して都庁に連絡してくれたが、握りつぶされたと感じている」 証言を受け、第三者委員会は行政の対応を批判している。「府中市や東京都、国が積極的に指導に踏み切らなかったために問題を長期化、深刻化させた。責任は重い」 ▽理事長は「身体的虐待はなかった」と虚偽の説明 ところで、元副理事長はどんな人物なのか。関係者によると、市職員の時代は障害福祉の担当も務めた。現在は80歳前後。府中市が虐待を認定した後の2020年末に清陽会を退職したが、特に処分は受けなかったという。 退職後に清陽会へ提出した文書では虐待を否定した上で、「記憶にない事象での行動がある場合は深くおわび申し上げる」などと弁明。第三者委員会の面談依頼は拒否していた。 取材のため直接話を聞こうと自宅を訪ねたが、応対した元副理事長の妻は「『お話しすることはない』と申しています」と答えた。