日本フェミニスト経済学会大会 男性中心の資本主義による「女性の資源化」に警鐘
8月3日、東京・専修大学神田キャンパスにおいて、日本フェミニスト経済学会(JAFFE)2024年度大会が行なわれた。共通論題「フェミニスト経済学とエコロジー:人間と環境のウェルビーイング(注)を模索する」を中心に、幅広い領域の研究者が集い、活発な議論がかわされた。 JAFFEは、経済学や経済諸問題に関してフェミニズム・ジェンダー視点からの探求を前進させる目的で08年に創設された。主流とされる経済学が前提とする人間観そのものがジェンダーバイアスを含んでいるという視点に基づき、伝統的経済学を批判的に検証し、経済学を再構築しようとする試みである。「フェミニスト経済学とエコロジー」は、経済のシステムが成立するために不可欠でありながら見過ごされてきた女性の労働に加えて、システムの外部に無尽蔵にあるものとみなされてきた自然環境に着目するものだ。 ここでいう「見過ごす」「みなす」の主語はいずれも男性中心の経済社会である。セッションの趣旨にある「不均衡な権力とジェンダーの関係」による経済構造は、人間をビジネスに組み込み、使い捨てることが可能な労働力のように扱ってきた。そこから多くの健康被害やハラスメント、過労死などの問題が生じてきたことは周知のとおりである。そして自然環境は人間よりもさらに無頓着に扱われ、その結果、気候変動による災害が人間の経済社会関係に大きな危機をもたらしている。ジェンダー不平等と経済問題、環境問題とはつながっているのだ。 座長の岩島史さん(京都大学)と大橋史恵さん(お茶の水女子大学)は「経済成長を前提としたよりよい市場資本主義をめざすのではなく、領域横断的にエコロジーの問題系に再接近し、フェミニスト経済学の今後の課題を討議することを目指したい」と述べた。 大会の報告者は、佐藤千寿さん(ワーヘニンゲン大学)、湯澤規子さん(法政大学)、嶽本新奈さん(お茶の水女子大学)、福永真弓さん(東京大学)。いずれの報告も、産業革命以来の約200年の間に、人間が地球環境に与えてきた深刻な影響を直視し、問題を解決するための重要な示唆を含む内容だった。