『メタファー:リファンタジオ』目黒将司氏による楽曲の制作秘話。現役の住職、合唱団の児童など、意外なようでピッタリ! なボーカリストたちの人選には、どんな狙いがあったのか?
『ペルソナ3』、『ペルソナ4』、『ペルソナ5』のクリエイターたちによるRPG最新作『メタファー:リファンタジオ』(以下、『メタファー』)。そのオリジナル・サウンドトラックが、アトラスDショップなどで2025年1月15日に発売されることが決定した。 【記事の画像(9枚)を見る】 当記事では、本作のコンポーザーを務めた目黒将司氏へのインタビューをお届け。現役の住職が歌唱するお経のようなボーカル入りの曲をはじめ、本作にはさまざまなボーカリストたちが参加した名曲が詰まっている。ゲームの中やサウンドトラックで改めて聴きたくなるような制作秘話を、目黒氏にたっぷり語っていただいた。 目黒将司(めぐろ しょうじ): フリーランスのコンポーザー、インディーゲームクリエイター。アトラス在籍時には、『真・女神転生III -NOCTURNE』、『ペルソナ3』、『ペルソナ4』、『ペルソナ5』などでコンポーザーを務めた。現在は、インディーゲームとして『Guns Undarkness』(ガンズ・アンダークネス)の制作に取り組んでいる。 現役の住職さんが歌唱! 『メタファー』を象徴する“宗教音楽” ――『メタファー』が発売されて約1ヵ月が過ぎました。目黒さんは、発売後のプレイヤーからの反響をどのように感じていますか?: 目黒: 本作は、 『ペルソナ』シリーズほど派手めな曲が多いわけではありませんので、サウンドに関してはそんなに反応がないんじゃないかな……と思っていたんです(笑)。もともと、作品のイメージをサウンドでガンガン打ち出していくというよりは、縁の下の力持ちになるつもりで作曲に取り組みましたからね。 ところが、皆さんの反応を拝見すると、これはこれでアトラスらしい、今回もけっこう攻めている、みたいな評価をしてくださっている方も見かけて、個人的にはちょっと意外でした。 ――ゲームの発売直前に開催された完成披露会では、楽曲の歌唱を務めた本良敬典さん(長現山妙常寺 住職)を迎えてのライブパフォーマンスが大きな注目を集めました。多くの楽曲に盛り込まれているお経のような男性ボーカルを、現役の住職さんが務めているというのはインパクトがありましたね。 目黒: 本良さんは住職を務めておられるほかに、お経とジャズを融合させた“Nam Jazz Experiment”のメンバーとしても活動されていて、その動画を拝見したのがきっかけで打診させていただきました。 ――以前のインタビュー(週刊ファミ通2023年7月6日号にて掲載)で、目黒さんは「(本作のサウンドで)軸にしているのは“宗教音楽”です。と言っても、実在の宗教をモチーフにしているわけではなく、『メタファー』の作中に宗教があるとしたら、どのような音楽を添えるとマッチするだろうか、といったアプローチから掘り下げていきました」と話されていましたね。 目黒: 作中の宗教音楽を表現するにはどんな要素を入れるのがいいかを考えたときに、読経のような歌唱を想像してみたらピタリと合ったんです。そこで、本物のお坊さんに頼むのは難しいだろうなと思いながらもイメージに合致しそうな方を探し続けていたら、本良さんの動画を見つけまして。 そのURLをアトラスさん側に伝えて、こういう感じで歌える方をいっしょに探してもらおうかと思ったのですが、「そもそも、本良さんにお願いするのがベストなのでは?」という結論に達しまして、お声掛けさせていただいたという経緯になります。 ――本良さんの歌唱はお経のようにも聞こえますが、実在の宗教がモチーフではないのですよね。 目黒: 設定としては、 『メタファー』の世界の言葉で歌っていただいています。そのうえで、作曲の裏話のようなことを言いますと、エスペラント語(※)をベースに、『メタファー』の言語も取り入れるなどして作りました。曲ごとに、「旅とは」「英雄とは」といったテーマの文章を用意し、ラップのようなテンポで本良さんに読み上げていただいています。 ※エスペラント語……母語や民族が異なる人々のあいだの意思伝達、相互理解を目的とした国際補助語。 ――先に曲を作って、その尺とリズムに合わせて歌唱しているのですね。本良さんにとって、かなり特殊な依頼だったのでは? 目黒: そうかもしれません(笑)。こちらとしても、お経を唱えているような音を出せるシンセサイザーで仮歌(※)のようなものを用意させていただいたりもしましたが、けっこうな速さがあるテンポに合わせて一気に読み上げるというのは、相応のご苦労があったのではないかと……。ご尽力いただいたおかげで、とても力のある楽曲が生まれました。 ※仮歌……歌唱を担当するアーティストに曲のイメージを伝えるため、別のシンガーが仮で歌うこと。 ――まさに、『メタファー』らしい雰囲気になっていると感じます……! 開発者といちファンが選ぶ! 名曲たちの制作秘話 ――そんな本作のサウンドについて、ここからは開発者や自分(ファミ通のアトラス担当編集者にして一介のファン)が個人的にイチオシする楽曲をどしどし挙げていきたいと思いますので、それらの制作秘話もぜひお聞かせください。: 目黒: なるほど、わかりました。 ――まずは、ゲームのオープニングで流れる『英雄譚序曲』です。キャラクターデザイナーの副島さん(副島成記氏)は、この曲がお気に入りだそうです。 目黒: おお、そうなんですね。じつは、作中ではこの曲をフルサイズで使用していないので、フルサイズを聴けるのはサウンドトラック限定だったりします。 ――この『英雄譚序曲』は、本作の映像が初披露されたファーストトレーラーのBGMにもなっていましたね。 目黒: オープニングの曲を最初に仕上げてほしい、というオーダーをアトラスさんからいただいて、これがファーストトレーラーのBGMにも使われると聞いていました。本作に限らず、オープニングのように作品を象徴する曲から取り掛かるほうが以降の作曲もスムーズですし、開発チームからも「物語序盤のフィールドやバトルの曲から仕上げていってほしい」というのは毎回言われますね。ただ、いろいろな曲を作るにつれて、そのゲームらしい作りかたが掴めてきたりもするので、最初のころに作った曲を後で調整することもあります。 ――ディレクターの橋野さん(橋野桂氏)は、敵に対して先制攻撃を仕掛けたときの勇ましいバトル曲『猛き者たちよ』がお気に入りとのことです。これも早い段階で作られた曲なのでしょうか。 目黒: じつは、本作で最後に仕上げたのがその曲なんです。 ――えっ、そうなんですか? 目黒: 通常バトルの曲というのは、プレイヤーがもっとも頻繁に聞くことになるものですし、ゲームサウンドの花形でもありますから、じっくりと考える時間が欲しいんです。それに、やはり、後に回すほどゲームのコンセプトに合った曲を作りやすいですから、できることなら通常バトルの曲は早めにオーダーしないでほしいというのが正直な気持ちです(笑)。ただ、 『猛き者たちよ』が最後になったのには別の理由がありまして、当初は『戦う者たちよ』が通常バトルの曲になる予定でした。 ――敵から逆に先制されたときの、緊張感漂うバトル曲ですね。 目黒 : 『戦う者たちよ』を作った段階では、開発中のゲームもいまより重々しい雰囲気があったんです。でも、開発が進むにつれて勇ましさや明るさが増してきたということで、バトル曲もそれにふさわしいものを用意することになりました。また、先制すると曲が変わる演出を今回も入れたい、というアトラスさん側の意向もありました。 ――演出といえば、ダンジョンを探索中、敵が近くなるとBGMに太鼓のような音が加わりますよね。あれは曲の一部なのか、それとも効果音のようなものでしょうか? 目黒: 厳密には、探索中のBGMとシンクロしている太鼓のトラックが別で搭載されていて、敵が近くなったらそれをオンにしている、といった感じの仕組みです。ちなみに、太鼓入りのバージョンをサウンドトラックに収録することも検討したのですが、アトラスさんと相談した結果、これはあくまでもゲームとしての演出なので、サントラに入れるのは見送りました。 ――確かに、プレイ中の心理とシンクロする演出でしたね。それから“設定”の面でおもしろいと思ったのは、『メタファー』の音楽は主人公の頭の中で鳴り響いている、というものです。これも作曲にあたって考慮されたのでしょうか。 目黒: その設定も頭の片隅には置いていましたが、それに縛られすぎると作曲の幅を狭めてしまいそうでしたので、自分の中で折り合いをつけながら努力することにしました。そのため、開発初期のころは電子機器をなるべく使わずにファンタジーの世界観を表現するような方向性で作っていたんです。 その後、ゲームの雰囲気がいまの形に近づいていくにつれて、より派手でキャッチーな曲を求められるようにもなったので、使用する楽器や設定の縛りからは徐々に解放されていきましたね。……そのおかげで、初期に作った曲をほぼすべてリファインすることになりましたが(笑)。 ――そんな苦労もあったのですね(笑)。ボス戦の曲に関しては、ニンゲンと戦うときの威圧感が伝わってくる『其の名はニンゲン』や、臆することなく挑む主人公たちの勢いが伝わってくる『強敵との対峙』など、さまざまな方向性の曲が用意されています。個人的には、ダンジョンのボス戦でしばしば試行錯誤したり長期戦に陥ったりしたせいか、『死線の果て』が脳内に焼き付いて……夢の中にまでこの曲が流れてきました。 目黒: (笑)。ボス戦の曲は、それぞれの用途が最初から決まっていたわけではなくて、それこそまさに威圧感がある曲や、勇ましさを感じさせる曲など、いくつかの方向性で作ってほしいというオーダーをいただきました。そうして完成した後に、曲が流れるシチュエーションをアトラスさんのほうで割り振ってもらった感じですね。 ――ニンゲンなどのビジュアルや、世界観のコンセプトアートなども作曲の参考にされるのでしょうか? 目黒: いえ、基本的にはゲームのシナリオと仕様だけを参照しています。これはバトルに限らず、フィールドなどの曲についても同様です。ビジュアルありきで作曲すると、ゲームの本質から遠ざかってしまう可能性もありますからね。ビジュアルとサウンドのあいだに主従関係が生まれないよう、サウンドならではのアプローチでゲームの本質と向き合いながら作るようにしています。 ――もうひとつ、バトルの曲に関して聞きたいことが。どの曲も、冒頭の数秒間で鮮烈な印象を与えるような作りになっていて、これは、本作のファスト&スクワッド(※)で生まれる“探索からバトルへの移行”を意識した、イントロ的な演出だったりするのでしょうか。 ※ファスト&スクワッド……フィールド探索中に敵を叩いて気絶させ、有利な状況でコマンドバトルに移行できるシステム。 目黒: ああ、なるほど。じつは、ファスト&スクワッドを意識していたわけではなく……。これはゲームサウンド全般に言えるのですけれど、ゲームというのはインタラクティブなメディアですから、どのタイミングで曲が切り換わるかはプレイヤーの操作しだいですよね。そうなると、コンポーザーがコントロールできるのは曲の始まり、イントロ部分くらいなんです。 本作においても、探索中の曲がどこで終わろうと、バトルの曲は必ず冒頭から流れますから、どんなタイミングで移行しても違和感が生じないよう、イントロ部分はとくに意識して作るようにしています。 ――ゲームサウンドならではの配慮なのですね、納得です。 ボーカルのこだわりは、フィールドやイベントの名曲にも! ――完成披露会の檀上では、橋野さんから『自由の翼』についても褒められたので目黒さんの中でこの曲がベスト1になった、と語られていましたね。この曲は、物語の後半、鎧戦車が空を飛ぶようになってから流れるものですが、確かにこれも名曲でした。: 目黒: ありがとうございます。この曲は、シンガーソングライターの片桐舞子さんにボーカルをお願いさせていただきました。メロディーは洋風ですけれど、こぶしを効かせた声の出しかたなど、節まわしを日本の民謡風にして歌っていただいています。 片桐さんはポピュラーミュージックやロックなどさまざまな音楽の要素を取り入れながら活躍されている方なのですが、ご両親が片桐会片桐流民謡の家元の師範をされていて、ご自身も民謡に長けていらっしゃるんです。『自由の翼』のほかにも片桐さんがボーカルを務めてくださった曲はいくつかありますので、サウンドトラックでもぜひ聴いていただきたいです。 ――アカデメイアに入ると流れる曲『英雄たちに捧ぐ詩』も、ボーカルが印象に残っています。アカデメイアは、『ペルソナ』シリーズで言うところのベルベットルームのように作品世界を象徴する場所のひとつかと思いますが、曲についてはいかがでしょうか。 目黒: やはり、皆さんに末永く親しんでもらえるような曲にしなければ……というプレッシャーはありました。そんな 『英雄たちに捧ぐ詩』では、杉並児童合唱団の半谷倫哉さんに歌っていただいています。この曲にはボーカルを入れてほしいというアトラスさん側からのオーダーもありましたので、子どもの美しいソプラノボイスを入れたいと僕から提案し、とてもお上手な方を見つけてもらいました。いやぁ、本当に天使のような歌声ですよね。 ――なおかつ、どこか知的というか、アカデミックな雰囲気の曲に仕上がっていて、いかにもアカデメイアという感じがします。それから個人的には、最推しのキャラクターであるユーファと出会う島の曲、『ビルガ島』もすごく好きです。民族的というか、異文化な感じが伝わってきます。 目黒 : 『ビルガ島』は、南インドのコナッコルという伝統的なボイスパーカッションから着想を得ています。まさに、独自の文化を感じさせる歌唱法はないかな、と調べていたらコナッコルに行き着いたんです。そこでアトラスさんとも相談して……というかワガママを言いまして、この方向性でボーカルを務めていただける方を探してもらい、タブラ奏者の池田絢子さんにお願いすることができました。 仕上がった曲は、厳密にはコナッコルとはまた異なる歌唱法なのですけれど、こちらのイメージを池田さんが巧みに解釈してくださって、とてもいい雰囲気に仕上がりました。 ――本良さん、片桐さん、半谷さん、そして池田さんなど、各方面でまさにピッタリの方々を見つけていますよね。 目黒: そこは、アトラスさんのご協力をいただけていることが大きいです。僕がアトラスさんに所属していたときからの協力関係でもあるのですが、自分ひとりでは見つけたり打診したりするのがなかなか難しい場合も、アトラスさんや関係者さんのツテでご縁ができたりして、とても助かっています。フリーランスの立場にありながら、クライアントにこういうサポートをしてもらっている例はあまりないと思いますが……(笑)。 ――いまも変わらず良好な関係なのですね(笑)。作中で歌姫として登場するキャラクター、ジュナが歌唱する『満ちよ、惺りよ』と『輝ける矢』も、それぞれ物語の重要なシーンで挿入されました。この2曲は、ジュナ役の声優を務める南條愛乃さん自身がボーカルを務めていて、納得のキャスティングでした。 目黒: いずれも、オーダーをいただいた時点で曲の歌詞や設定などがありましたので、それに合わせて作曲を行いました。 『満ちよ、惺りよ』は、惺教(※)の聖歌のようなイメージにしています。『輝ける矢』のほうは、バックに大掛かりな演奏をつけず、ボーカルにスポットライトが当たる感じにしてほしいという指定がありましたので、ボーカルとピアノの伴奏のみで仕上げました。 ※惺教……作中の世界で国教となっている宗教。 ――作中の歌劇場でジュナが歌う『輝ける矢』は、ここで起きるイベントとも相まって、強く印象に残っています。イベント中にアニメムービーも挿入されていましたね。 目黒: ムービーの何秒のタイミングでこういうことが起きるので、ここで曲の盛り上がりを作ってください、みたいな細かい秒数指定もありました。これはアニメなどの劇伴(※)を作るときのあるある話なんですけれど、尺がちょっとでも変更になると曲も調整する必要が出てくるので、今回もそういうプロセスはありましたね(笑)。 ※劇伴……シーンの尺や演出に合わせた音楽。 ――お互いのこだわりから生じるキャッチボールだ(笑)。ここまで、こちらから挙げた曲についてお話しいただきましたが、目黒さん自身がお気に入りの曲を挙げるとしたら何でしょうか。 目黒: そうですね……、すっと思い浮かんだのは 『海洋都市ブライハーヴェン-夜-』です。メロディーは昼間に流れるものと同じなのですが、シャレた感じで言うなら「夜祭りの後にふたりきりで帰る様子」をイメージして作りました。どのあたりが夜祭りなのかと言うと、和太鼓の端っこを叩いたときのような“カッ”という音を要所に入れています。音量はあまり大きくせず、耳をよく澄ませばわかる程度に入れてみました。個人的に気に入っている曲のひとつですね。 オリジナル・サウンドトラックだけのお楽しみ ――ゲームのスタッフロールで知ったのですが、本作のサウンドには、アトラスサウンドチーム所属の土屋憲一さん、喜多條敦志さん、小西利樹さんも参加されているのですね。: 目黒: 開発の後期に上がってくるアニメの劇伴や、主人公が支援者と握手するシーンで流れる曲など、いくつかを担当していただいています。じつは、本作の体験版をプレイしたときに初めて聴く曲もいくつかあってビックリしました。 ――ということは序盤から、アトラスサウンドチームの曲が流れるシーンもあるのですね。 目黒: すごくいいところで流れるすばらしい曲がいろいろありました。皆さんが作った曲を僕が監修するようなことはしていないのですが、おそらくプレイヤーの皆さんにお聴きいただいても、この曲はほかと雰囲気が違うかも……みたいな違和感はまったくないと思います。 ――皆さん、さすがの連携ですね……! ちなみに、読者の方に向けて補足しておきますと、本作の限定版(アトラスブランド35thアニバーサリーエディション)に同梱されているスペシャル・サウンドトラックには、目黒さんが手掛けられた曲のみが収録されています。アトラスサウンドチームの曲も堪能したい! という方は、アトラスDショップで発売予定のオリジナル・サウンドトラックをぜひお求めいただけたらと。 目黒: おお、いいですね。僕も欲しいです(笑)。 『メタファー:リファンタジオ』オリジナル・サウンドトラック ※スペシャル・サウンドトラックにも収録されていた61曲は、本アルバム用に音源を調整して新たにマスタリングを施しているほか、70曲にもおよぶ楽曲を追加収録しています。 SFの世界でも“目黒節”は炸裂するか!? ――せっかくの機会ですので、目黒さん個人が制作されているインディーゲーム『Guns Undarkness』(ガンズ・アンダークネス)の音楽についてもお聞かせください。こちらの世界観はSFですが、どのような方向性の音楽を目指しているのでしょう。: 目黒: 先ほどお話しした 『メタファー』の作曲姿勢にもつながりますが、『ペルソナ3』以降の同シリーズでは、ビジュアルとサウンドが主従の関係になるのではなく、サウンドならではのアプローチを追求してきました。この点、『Guns Undarkness』は、より昔のスタイルで作っていると言いますか、「こういうビジュアル、こういうゲームだからサウンドはこうしよう」という感じで取り組んでいます。なおかつ、商業的にも成功してほしいので(笑)、要所でボーカルも入れるなどしてサウンドのキャッチーさを出していきたいですね。 ――今後お披露目される楽曲を楽しみにしています。目黒さんがSNSやYouTubeでご自身の作曲風景を配信している様子も拝見したことがありますが、ある回では約6時間の配信で1曲を完成させていましたね。 目黒: ご覧くださってありがとうございます。もちろん、配信当日にゼロから作り始めたわけではなくて、ある程度作っていたメロディーにどの楽器をどのように乗せていくか、という過程をご覧いただきました。本当にゼロから作り始めたら、ただひたすら頭をひねって「う~ん、今日はここまで」という光景が3日くらい続いちゃうと思います(笑)。 ――(笑)。メロディーも、配信のときのように鍵盤やギターを使いながら考えるのでしょうか。 目黒: そうすることが多いですが、頭の中で考えることもあります。とはいえ、頭の中はつねに何が浮かんでくるかわからない臨戦状態で日々を過ごしていますので、腕組みして考える、みたいなことはあんまりないですね。スケジュール的にそろそろ仕上げないとマズいとなったら、鍵盤やギターに触れながら集中して考えます。 ――配信では目黒さんが使っている作曲ソフトの画面も映っていて、こんな風に曲ができ上っていくのかぁ……と興味深く拝見しました。たとえば、ギターのトラックひとつを作るにしても、たくさんのライブラリの中からどのギターを使うかを吟味しておられたりして。 目黒: 僕が持っているライブラリはまだまだ少ないほうで、DJを生業にしている方などは、さらにものすごい量を揃えていたりしますね。いずれにしても、どこに、どんなライブラリがあるかを覚えておくことは大切で、曲を作っているときに「あの音が使えるかも」と思ったら、すぐに引き出すことができるようなノウハウの蓄積が欠かせません。 ――なるほど。作曲ソフトのインターフェースが、動画編集系のソフトとちょっと似ているのも理解の助けになりました。目黒さんが何をしているのかが感覚的にわかりやすかったです。 目黒: 皆さんに何となく見ていただいて、何となく楽しんでもらえているようでしたら何よりです。できるだけ月1回くらいは配信をやりたいと思っているんですけれど、ゲーム自体の開発がもっと進んでから曲を作りたいという気持ちもあるので、なかなか機会を作れずにいます。でも、いずれまたやりたいですね。 ――『Guns Undarkness』をリリースできる時期は見えているのでしょうか。 目黒: 2025年の春ごろにアーリーアクセスを行いたいと思っています。ひとりでひたすら作り続けていると、内容にダメ出しできるのは自分しかいなくなるので、サポートしてくださっている講談社クリエイターズラボさんや、試遊してくださった方々からご意見をいただけるのは、すごく助かります。これからもぜひ、応援をよろしくお願いいたします。 ――最後に、『メタファー』も含め、目黒さんのご活動に注目している皆さんへのメッセージをお願いします。 目黒: いまはフリーランスでゲーム制作に力を入れていますが、もちろん、完全に“ゲームを作っているおじさん”へとシフトしたわけではなく、音楽も多方面で作っていけたらと思っています。目黒の新しい音楽、新しいゲームを皆さんにお届けできるようにがんばりますので、今後もご期待いただけたらうれしいです! [2024年11月15日20時42分修正] インタビュー文中において、池田絢子さんの漢字表記に誤りがあったため、該当の文章を修正いたしました。読者並びに関係者の皆様にご迷惑をおかけしたことをお詫びいたします。