遺産の分割協議がまとまらないという話をよく聞きます。事前にどんな準備をしておけばよいのでしょうか?
相続が発生すると、被相続人の財産を相続人が引き継ぐための手続きを行いますが、その中でも重要なのが遺産分割協議です。 遺産分割の内容は、相続人間の話し合いで決めることになります。ただし、各相続人の事情や相続人間の感情的な対立によって、話し合いがスムーズに進まないことがあります。また、裁判などに至るケースもあるので、できるだけ円満な相続ができるように準備しておきたいものです。 今回は、遺産分割協議がまとまらない事態を避けるために、事前準備のポイントを紹介します。
遺産分割の大まかな手順
相続の手続きにおける遺産分割は、遺言書の有無で手順が異なります。 まず、被相続人が生前に遺言書を作成している場合は、原則として遺言書の内容に従って財産の分割を行います。しかし、遺言書がない場合や、遺言書に記載されている内容が不十分な場合、遺産分割協議をする必要があります。 遺産分割協議は相続人全員での話し合いとなりますが、財産を分割する方法や割合について、なかなか決まらない場合もあります。話し合いが長期間続いたり、争いになったりするケースのほか、最終的に裁判所の介入が必要になることもあります。 その場合、裁判所において調停を行い、さらに調停でもまとまらないときは審判を受ける流れとなります。 裁判所の司法統計年報によると、令和4年の遺産分割事件は1万2981件あり、そのうち調停が成立したものが5729件、調停に代わって審判となったものが3791件です。裁判になると、いわゆる「争続」となってしまい、家族の関係も壊れてしまう危険性すらあります。
遺言書のメリット
相続での争いやトラブルを最小限に抑えて、遺産分割を円滑に進めるためには、事前の準備が不可欠です。中でも、相続対策として有効なのが遺言書の作成です。遺言書は、自分の財産を死後どのようにしたいか、その意思を残しておくための法的な手段であり、遺産分割において非常に有効な手段です。 遺言書には、大きく分けて次の3つのメリットがあります。 ・被相続人の意思が明確になり、財産の分割が円滑に進む ・被相続人の思いを家族に伝えることで、家族内での対立や争いを未然に防ぐことができる ・遺言書があると原則として遺産分割協議は不要なため、相続の手続きが迅速に進められる 遺言書には、自筆で作成した書面に押印する「自筆証書遺言」、証人2人以上とともに公証役場にて公証人の下で作成する「公正証書遺言」などがあります。作成の手間や費用、遺言の内容の有効性が確保できるかなど、それぞれのメリット、デメリットを比べて作成するといいでしょう。