【意外な真実?】「同僚・ライバルと競う=成長にいい」必ずしも断言できない納得の訳 「レッドクイーン理論」を知っていますか?
すなわち、「同僚やライバルと競争して切磋琢磨することは、本当の意味での成長のために必ずしもいいことではない」ということだ。 ■ライバルとの競争は、成長のためにいいとは限らない? ポイントは、社会・ビジネス環境の変化がより激しくなったことにある。 このような状況で、目の前のライバルばかりを意識して競争をしていると、やがて競争そのものが自己目的化してしまい、競合相手だけをベンチマークとするようになる。
結果、細かな製品スペックなど「小さなレベルでの成長」しかできなくなり、「大きな環境変化が起きたときに対応できない」というわけだ。 「両利きの経営」でいえば、目の前のライバルとの競争だけを意識すると「知の深化」だけをやるようになり、大きな変化に必要な「知の探索」へ経営資源が割かれなくなる。 結果、環境変化が起きると対応できずに壊滅する、ということだ。 日本でのわかりやすい例が、ガラパゴス携帯(いわゆるガラケー)である。
1990年代、日本のメーカー各社は切磋琢磨してガラケーの高機能化を進めていたが、それは細かなスペックだけの競争であった。 しかし、2000年代後半にスマートフォンが登場すると、海外メーカーにいっきに市場を奪われてしまった。 国内のライバルだけを見過ぎた結果、狭い領域での競争だけを意識するようになり、それが裏目に出たのだ。 ■意識すべきはライバルより腹落ちする未来へのビジョン このように考えると、本連載の記事(「経営」も「宗教」も本質理解できる“超スゴい理論”)でも述べたように、やはり大事なのは「センスメイキング」(腹落ち)なのだ。
すなわち意識すべきは「ライバル」ではなく「自分たちが腹落ちする未来へのビジョン」なのである。 遠い未来に目を向けて競争すれば、「知の探索」を続けることができて、大きな環境変化が起きた際にも、それにうまく乗ってさらに飛躍することができるのである。
入山 章栄 :早稲田大学ビジネススクール教授