裏金問題下の自民、京都市長選“勝っても敗北”の焦燥
世論調査「横一線」の衝撃
そんな選挙戦で松井陣営に衝撃が走り、福山陣営に期待が大きく膨らんだのは1月29日。新聞各紙が実施した世論調査で中盤情勢について「松井氏・福山氏横一線」「松井氏と福山氏激しく競り合う」との結果が出たからだ。 この日の夕刻、共産党委員長に就任したばかりの田村智子参議院議員は市内JR山科駅前で演説。熱気を帯びた多数の支持者を前に「金権腐敗の冷たい政治から市民の要求を尊重する政治へと、京都から変えていきましょう」と声を張り上げた。翌30日、共産党は福山市長実現に向け緊急支援募金を全国に呼び掛けたほか、2月1日付『しんぶん赤旗』も「京都市長選『横一線』の衝撃」との見出しによる記者座談会を1・2面に掲載。終盤に来て共産が前景に表れた形だ。 対する松井陣営。自民党参議院議員で京都府連会長の西田昌司氏がユーチューブ配信した動画には1月29日、「まさかの緊急事態!共産党に京都市が乗っ取られる?!」との見出しが躍った。2月1日に同陣営が急遽開いた決起集会には会期中で東京にいた国会議員はとんぼ返りで京都に戻り参加。 同夜に市内左京区の小学校体育館で開かれた個人演説会では西田氏や西脇隆俊・京都府知事ら弁士6人全員が福山陣営・共産に対する強い危機感と警戒感を露わにした。最後に登壇した松井氏も、共産が京都府政で与党だった蜷川虎三知事(1950~78年の7期)時代に「時計の針を戻してはいけない」と一層の支援を強く訴えた。 投票前日・当日の2月3日~4日には『京都新聞』に連続で「いま、京都が危ない!」などの大見出しで「一党一派に推される市長による偏った市政運営で京都を後退させてはいけません」と掲げた大きな広告を掲載。個人演説会も投開票前夜まで設定し、徹底して組織の引き締めをはかった。
「4年後は勝てる選挙を」
投開票日の出口調査では『朝日新聞』『京都新聞』がほぼ同様の結果を公表。松井氏は公明支持層の約9割を固めた一方、自民支持層は6割超にとどまり、他の3候補にそれぞれ1割超が分散した。立憲支持層では半分にも、国民支持層でも4割に届かず、国政与野党の相乗りへの不満が一定程度表れた形だ。無党派層からの支持も3割に届かず、苦戦を強いられた。 福山氏は共産支持層の約9割を固め、れいわ新選組支持層の8割弱、立憲支持層の3割余を取り込んだ。無党派層からは3分の1以上と、4候補中トップの支持を集めた。財政難を福祉施策にしわ寄せさせた門川市政への怒りの受け皿として猛追したが、あと一歩及ばず「勝てた選挙」を逃した。 2月初旬、左京区で行なわれた市長選の報告集会で「つなぐ京都2024」の代表は「人格も政策も断トツの福山さんなので本当に悔しい。4年後に今から備えよう」と総括。敗戦の弁で「ここまで肉薄したのは市民の勝利と言っていいのでは」と指摘した福山氏。「暮らしに重点を置く主張を貫いて4党の『連合艦隊』に立ち向かい、市民と野党共闘の底力の一端は示せた。今後も市民が声を上げることが大切。そこに道は開ける」と前を向いた。 ※村山祥栄氏の資金管理団体が昨年12月から今年1月にかけて企画した9回の政治資金パーティのうち8回で来場者がなかったことについて、京都弁護士会所属の弁護士ら20人が2月1日、政治資金規正法違反の疑いがあるとして京都地検に告発状を提出した。
土岐直彦・ジャーナリスト